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ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

盆踊りの音色を聴いて考えた 文化や伝統のこと

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俺が子供の頃から何度も何度も釣りに行っていた川のほとりの部分。
端的に言うと湿地帯のような、年中草がボウボウと生えていて、雨が大量に降って川が氾濫すると、その場所は川との境目がなくなって元より川だったんじゃないのかというような有り様になる。そんな広大な場所があった。

雨がやんでしばらくするとまたいつもの湿地帯に戻るのだけれど、今から20年ほど前に工事が始まった。
土壌改良をしたり土地の嵩上をして治水対策をしたりして、気がついたらそこは新興住宅地に様変わりしていた。


この辺りは昔から水が出るということで、人がまったく住んでいなかったのだけれど、比較的市街地まで近いこともあってあっという間に売れたそうだ。
市内、市外から主にファミリー層がこぞって引っ越してきた。

この川沿いには大小の古い集落が点々と存在しているのだが、その真中辺りに突如として出現した新たな住宅地は、そういった土地の人達と多少距離があったのは否めない。

俺は当時、家電販売の仕事についていたからその新興住宅地は上客揃いで数えきれないほど配達や工事に赴いた。

100を超える新築が新たに出来たのだから当然そこにも町内会ができた。
土手沿いの草刈りの取り決めだったり、ゴミの出し方の指導監視だったり、お祭りなどの催し物の開催だったりそれなりに若い人たちが取り仕切っていた。


その新興住宅地を挟むように存在する古い集落には、長い歴史に基づいた盆踊りや神楽(かぐら)があった。

詳しい話はよくわからない。
あくまで噂だけれど元からの集落の人達が新興住宅地で夏祭りをするということを聞きつけたので、自分たちが守ってきた踊りを教えようとしたらしい。
同時に子供が舞う神楽の伝統も、できたらやって欲しいとお願いしたらしいのだが、それを新興住宅側が断ったそうだ。
土着の宗教染みたそれら一連の文化に対してクレームが付いたらしい。


こういう話は新興住宅に出入りしている時に何人かから聞いた。

宗教色があるような文化を新しいこの町内に持ち込むのは如何なものか。
宗教的に受容できない人もいるかもしれない。

町内会の中で上記のような意見が出て結果として断ったそうだ。
その後開かれた盆踊りはよくあるロック調に編曲された「出来合いの盆踊り曲」を使って宗教色を感じさせないようにしたと聞いた。


確かにこういった考え方も良く分かる。
その土地に縁もゆかりもない人たちが集まって出来た住宅地だから、その近辺にあった伝統や文化に縛られたくないのは良く分かる。
そういったものは得てして非合理的だし、なによりシガラミの元凶のようなものだ。
だからそういったものを禁忌する気持ちは理解できる。


俺はたまたまこの新興住宅地に仕事柄足繁く通っていたから、こういった負の部分みたいな所を知ってしまったけれど、おそらく視点を全国に広げたらこういったケースはそこかしこにあるような気がする。


この古い文化を受け付けなかった新興住宅地の住民の考え方には一定の理解は示すけれど、正直な感想を述べると伝統を軽視する(結果的にそう見えてしまう)姿勢は賛同できない。


ここからは俺の個人的な意見を述べさせてもらう。
文化とはそれを守るのも壊すのも人間である。
だからこそ出来る限りそのままの形で、次の世代に受け継いでいくのが義務だと考えている。


例えば500年続いた祭りがあったとする。
その祭りは場合によっては死者が出るような激しい部分があるとする。
そういった危険も織り込み済みで続いてきた祭りを、近代の安全至上主義的な考え方で「野蛮である」というような批判をして祭りのシステムを変えようとするのは極めてナンセンスだと考えている。

同じようなケースで猥褻な部分がある祭りというのもある。
そういった催し物を「子供に悪影響がある」のような思想で変更させるようなこともやはり反対の立場だ。

たかが戦後70年で培ったアメリカ産の民主主義的考え方で何百年も守ってきた文化や伝統を「危険」であるとか「野蛮」であるとか「猥褻」であると批判の対象にすることがあるけれど、そういった基準は時代によってすぐにコロッと変わってしまうような脆弱なものだ。

今の基準からしたら危険だったり猥褻だったりするかもしれないが、我々のご先祖様がずっと守り受け継いできたものを壊してしまうのはいかがなものか?

壊すのは一瞬でできる。しかし文化や伝統は何百年という歴史がその正当性を担保するのであって一朝一夕にできるものではない。

だからこそ近現代に出来たような思想で文化を否定して壊したり変えてしまうのは極力避けなければならないと俺は考えている。
いまある文化はなるべく手をくわえずに次の世代へと受け渡したい。

そうやって受け継がれた文化を守る事こそ、その土地に生きることなんだろうと思っている。


今年も我が家の近所の氏神神社から懐かしい盆踊りの音色が聴こえてきた。


今回の記事はこちらを読んで刺激されて書きました。
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