ネットの海の渚にて

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DQNじゃないからどうにか喧嘩を回避する技を身に付けた話 (DQNシリーズ第3話)

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DQNじゃないのにDQNと喧嘩した話 (DQNシリーズ第1話) - ネットの海の渚にて
DQNじゃないのになぜかDQNにどっぷり浸かってしまった話 (DQNシリーズ第2話) - ネットの海の渚にて
今回は上記エントリーの続きです
まだお読みになってない方はこちらを先にご覧ください。





DQNシリーズ第3話


ボクは本来、学生生活をひっそりと送るつもりだった。

ところがひょんな事がきっかけとなって不良グループの一員となってしまったのだがその事実を素直に受け止められるわけもなく日々「これではいかんこのままでは本当のDQNになってしまう」と悩んでいた。

中学時代にも当然不良はいた。
そんな連中に対してボクは軽蔑していたし、そういった連中とは距離を置いていた。
率直に言えば不良がキライだった。
不良と関わることなど起こるはずないと思っていたが高校へ入学した直後ひっくり返った。


今まで毛嫌いしていたが話してみると案外いい奴ばかりだった。
漫画の話やアニメの話もするし、冗談だって言い合う。普段はそこらの普通の学生と変わらない。それどころか友情に厚く何かが起こればお互いに助け合い共に泣く。
そんな連中だった。
それでも一部どうしても相容れないところがある。

とにかく喧嘩ばかり起こすのだ。

下校の際、数人で歩いているのだが他校の生徒が視界内に入るとたちまち空気が変わる。周りの仲間を見ると人相が変わって「ガン」を飛ばしまくっている。さっきまで皆で北斗の拳のものまねなんかをやっていたくせにだ。

他校の生徒がちょっとでも不良っぽい格好をしていようものならとにかくそちらへ向かって「ガン」を送る。視線だけならまだしも背中を丸め顔を突き出し、肩を怒らせてガニ股でズイズイと向かって行くのである。

距離が縮むに比例して緊張感が高まりそれに耐えられなくなった方が目を逸らす。

そこで勝負は決着する。

互いに目を逸らさなければその距離はやがてゼロになる。
おでことおでこをゴリゴリと擦り合わせてガンを飛ばし合う。
それを横で見てるボクとしては「コレハイッタイナンノギシキデスカ?」ってな感じだ。

ガンの飛ばし合いはナンパのようなもので、その後の「おでこスリスリ」はSEXにおける前戯に該当する。当然その後は本番が始まる。

お互いの胸ぐらを掴んで殴りあうのはまだいいほうで、一番えげつなかったのはおでこスリスリからの頭突きだった。
「パチキ」と呼ばれるその技は相手の鼻をめがけておもいっきり頭突きを入れる行為でダメージがでかい。

ゼロ距離からの頭突きなので避けるのも難しくかなりの成功率を誇っていた技だ。
「パチキ」を食らった相手は一気に戦意喪失となってその場に崩れ落ちる。
はっきりいって汚い技だ。せめて正々堂々と殴り合えよと思ってはいたが、そもそもボクは喧嘩に巻き込まれないことを最優先事項として立ちまわっていたのでそんなことを言えるわけがなかった。

こんな事が毎日起こる。

毎日のように喧嘩をするから彼らは「パチキ」を使うのだ。
毎週興行するためにプロレスラーは怪我ができない。ガチンコの殴り合いをしていたら試合ができなくなるのと同様に、あまり評判のよろしくない技である「パチキ」を喧嘩に使うのは自分の負担を最小限にするための知恵だったのだと思う。

喧嘩の際、ボクはするするっと背後に隠れる。
複数人同士の喧嘩なので戦場における「前線」のような物が発生する。
お互いが横に広がってガンの飛ばし合いをやっているから怪しまれないようにこっそりと前線の背後に回り込む。

ボクは男とキスをするような距離で視線の交換をする趣味は無いし、そもそも殴り合いなんかはしたくない。だから本音ではその場から逃げ出したいけれどさすがにそれはできなかった。
その折衷案としてボクは仲間の後ろからガンの飛ばし合いに参加している体を装って、喧嘩が始まらないことをただ祈っていた。

但しこの方法が通用するのはこちらの人数が上回っている場合に限る。
基本的に一人に対して一人がつくので同数の場合ボクの相手がどうしても出てきてしまう。これがキャバクラならかなりの優良店だ。

そんな時ボクはその相手の胸ぐらを掴む。
当然相手も胸ぐらを掴み返してくる。
幸いボクは体が大きく力も強かったからお互いの胸ぐらを掴んだ格好のままジリジリと移動を始める。

他の連中はそれぞれの相手と気持ちの悪い儀式を執り行っている最中だから僕たちがその場を離れつつあることにまず気が付かない。
そもそもゼロ距離で相手の目を見つめ合っているから周辺視野が異常に狭い。

他の連中にばれないように充分な距離を取ってからボクは相手の胸倉から手を離し「まあそんなにカッカすんなよ」と言って相手の乱れた服装を治すのだ。
大抵それで相手の気がそれる。

喧嘩の腰を折るコツだった。

所詮街なかで偶然出会った同士なんだから喧嘩なんてしたくない。それは相手も同様だ。ボクがニコッと笑えば相手も落ち着く。
こんなことをやってどうにか喧嘩をせずに遣り繰りしていた日々だった。


そんな毎日に嫌気がさして一緒に下校することを様々な手を使って回避することになるのだがそれはまた別のお話。

今後もDQNシリーズは続きます。

弱者のための喧嘩術 (幻冬舎アウトロー文庫)

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