ネットの海の渚にて

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米軍による北朝鮮攻撃のシグナルはB-2とB-52爆撃機の増派だと思う件


北朝鮮に対するアメリカの軍事行為が俄に現実味を帯びてきた。
今までも北朝鮮は瀬戸際外交を繰り広げ相手国の譲歩を得てきた。

過去にもっとも開戦に近づいたのは1994年。
その時はカーター元大統領が北朝鮮に赴き、軽水炉を提供するという条件で戦争を回避した。

これは北朝鮮側から見ればあの世界最強国家である米国を相手取って希望通りの品をせしめたのであって完全なる大勝利である。
この時のアメリカ側が出した条件は今後自前で核開発しないという約束だったのだが、事実は皆さんご存知のとおりである。

この時の成功体験が忘れられない北朝鮮はその後も強気の外交を続けてきて、周辺国は翻弄されるということを20年以上繰り広げてきた。

その瀬戸際外交に対してついに堪忍袋の緒が切れたというのが今のアメリカによる空母打撃群の朝鮮派遣ということになる。



北朝鮮の瀬戸際外交に対してアメリカの、もうこれ以上はないぞというメッセージが空母カールビンソンの派遣であり、しかもこの空母はウサマ・ビンラディンの斬首作戦に参加した曰く付きの船であるのもある種のメッセージが込められていると考えたほうが良い。

ウサマ・ビンラディンが潜伏していたパキスタン郊外の住宅に、特殊部隊SEALsの中でも最も精鋭揃いと呼ばれるチーム6(通称DEVGRU)が、闇夜に乗じてまだ開発中だったステルスヘリブラックホークに乗って急襲、殺害し、その遺体を回収。これにより海神の槍作戦が終了した。
回収された遺体はDNA検査等によりウサマ・ビンラディン本人であると確認された後、アラビア海に停泊中だった空母カールビンソンに運ばれ水葬された。
余談であるがこのときに乗っていたステルス仕様のブラックホーク1機がホバリング中に姿勢を崩し墜落した。作戦終了後現場から離脱する際に技術流出を防ぐために爆破処理した。


空母カールビンソンはこういった曰く付きの船であり、あえてこの船を北朝鮮に向かわせたのにはお前の首も狙っているぞという意味が込められてると見ていいだろう。



本当にアメリカが開戦に踏み切るのか?

とりあえず現時点では、カールビンソンを中心とした空母打撃群を朝鮮半島に派遣しているだけなので、この状態からいきなり開戦ということは考えられない。
なぜなら、この戦力だけで開戦すると韓国や日本に対して行われる反撃を防ぎきれないからだ。

最近シリアで米軍が59発のトマホークを軍事施設に対して発射したことがあった。
これはシリアの軍事施設が地上にあったから可能な攻撃であって、もし地下に施設があるのならトマホークは無力である。
それとシリアに対するトマホークを使った攻撃は米軍からすると最も安全な攻撃である。
地中海に展開中のミサイル艦から攻撃しているだけなので、反撃される可能性はほぼ0である。
アウトレンジから一方的に攻撃できるのだから米側の軍事的な負担は相当軽い。


これが北朝鮮になると話が変わる。
北朝鮮の主要な軍事目標はことごとく地下にある。
こうなるとアウトレンジからトマホークを撃つだけでは効果がない。

米軍にはバンカーバスターという地中深くにまで貫通して爆発する特殊な爆弾がある。
しかしこれは船から打てるミサイルではなく、航空機に載せて目標上空から投下という運用が必要になる。

しかしこの1991年に実戦配備された通称バンカーバスター(GBU-28)は地中30メートルまでしか貫通できない。
つまり地下施設がそれ以上深いところにあった場合通用しないということになる。
バンカーバスターが30メートルまでしか届かないという情報はいつの間にか公になっていて、北朝鮮もそれを当然知っているはずで、対策を練っていると考えるのが妥当である。

米軍はこのバンカーバスターの威力に不満があったために新型の制作に着手していた。
それで出来上がったのがGBU-57である。

この新型爆弾は地下70メートルまでの目標に攻撃を当てることが可能になった。
但し貫通力並びに攻撃力を上げるため、1発あたり13.6トンという超が付くほどの大型爆弾になってしまった。
そのため今までのバンカーバスター(GBU-28)なら攻撃機(ストライクイーグルなど)にも搭載可能だったが、GBU-57は大型ステルス爆撃機であるB-2ですら2発しか載せられない。


つまりアメリカが北朝鮮を空爆するためには同盟国への反撃リスクを最小限にするために、同時多発的に地下軍事施設を叩く必要があり、空母打撃群が1つ朝鮮半島に派遣されても戦力的に足りないということになる。


もちろんアメリカが同盟国への反撃の可能性を排除しないまま軍事作戦に突入する可能性はゼロではない。
アメリカの都合だけ考えたら全ての軍事施設を同時に叩く必要はない。
自軍に対する反撃だけ警戒すれば良いわけで、韓国や日本はそれぞれ自分たちで自衛してくれと要請して開戦に踏み切ることもありえなくはない。

但し前回の1994年のときもこのまま開戦したら甚大な被害を受けると予測された韓国側の強い反対があったからこそのカーター元大統領の派遣、戦争回避という流れだったわけで、今回と事情は大きく変わらない。


アメリカが開戦に踏み切るには韓国と日本の安全を確保できるという確約がなければその二国からOKが出るわけがない。
戦後処理のことも考えると韓国と日本の同意を取らずに開戦してしまうのはアメリカといえども躊躇するはずで、そうなると北朝鮮の反撃力を初手で潰せるだけの作戦を組まなければならず、そこから逆算するとやはり空母打撃群1個では足りないということになる。


話を元に戻すと、現状ではカールビンソンを中心にした空母打撃群が派遣されているだけなので開戦はまだという推測が成り立つ。
もし今後別の空母打撃群が合流したり、在日、在韓米軍基地ならびにグアム等の朝鮮半島を射程に収める米軍基地にB-2やB-52などの爆撃機が平時よりも多く配備されてきた場合は開戦が近いというシグナルになる。
つまりこれ以上戦力を朝鮮半島周辺に集めなければあくまでもこの一連の行為は戦争をちらつかせた威圧であり実際には開戦するつもりは無いということになる。


そして私の個人的感想としては空母打撃群が北朝鮮の目と鼻の先で連日軍事訓練を繰り返して挑発威圧し、北側の譲歩を引き出させる持久戦に突入する。しかし北側も折れること無く膠着状態に陥ると見ている。
数ヶ月膠着状態が続いたところに中国が介入して北朝鮮のトップを交代させ一定の解決とするシナリオが現実的だと思っている。
もちろん金正恩の第三国への亡命もオプションとしては十分ありえる。



ちなみにここまで書いてきて申し訳ないが、実際のところ開戦のシグナルとしてなによりわかりやすいのは、外務省が発する韓国への渡航情報、危険情報がどのレベルなのかが参考になる。
とりあえず現時点ではまだレベルを引き上げるまでに達しておらず、文面で注意を促している段階なので、気になる方はここを随時チェックするのがいいだろうと思う。
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