ネットの海の渚にて

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iOS9で採用されたCrystalでウェブはどう変わるのか【アドブロック・コンテンツブロッカー】

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ここ数日、iOS9で配信が開始された「Crystal」のアドブロック効果が、事前の予想を超える効き目であるということが各所で検証されて記事になり、一部のネットユーザーの間で喧々諤々の議論が起こっている。

しかも導入方法はアップルストアで「Crystal」アプリをダウンロードして、簡単な設定を済ませるだけですぐに強力なアドブロック効果が発揮される。
この簡便さは、今までであれば「面倒そう、難しそう」というイメージで避けていた、多くの人達もがアドブロックを導入する可能性があるということだ。


一般的なネットユーザーであれば、なぜ広告が表示されなくなることで、これだけ騒動になるのかわからないという方もいらっしゃると思う。
特にスマートフォンにおいては目障りなウェブ広告が増えていることもあって、その「うざい広告」が消えるなら、こんなに良いことは無いじゃないかと思われるのが一般的な感覚だろうと思う。

しかしこの広告を消すという行為は、廻り回って自分に帰ってくる可能性がある。
今回はこの事について考えてみたい。


広告収入で出来上がったネット生態系

ネットの覇者といえばGoogleだが、それは同時にウェブ広告の王者であることと同義だ。
私達が便利に使っているGoogleの各種サービスは、その殆どが無料で提供されている。

グーグルマップ、Gメール、Ingres、Googleフォトなど……。
硬軟織り交ぜて、あらゆる階層のネットユーザーが何かしら利用しているサービスがGoogleから提供されているわけだが、そのどれもが基本的には無料で提供されている。


Googleはネット界の巨人だから、その莫大な利益をユーザーに還元するために無料で提供している……ワケがない。
無料というエサでユーザーを集めて、そこから得る莫大な情報を金に変える術を持っているからに過ぎない。

もちろん提供されるサービスの質が高いからこそ成立するビジネスモデルであるのは言うまでもない。


Googleの収益の大部分は広告収入である。
マップだろうがIngressだろうが、それは広告収入(+ユーザー情報)を得るために提供しているわけであり、このビジネスモデルが瓦解したなら、当然ながらサービスの提供も終わる。


Google以外の多くのウェブサービス事業者やコンテンツホルダーもやはり同様に広告収入を経営の軸にしている。
現在は無料で提供されているサービスやコンテンツも広告以外の収益化に転換できなかった場合は、有料化するか終了するかの二択になってしまう。

つまり安易に広告を排除するアプリを使用すると、自分が愛用していたサービスや楽しみにしていたコンテンツがウェブから姿を消してしまう未来を助長している可能性があるということだ。


もちろん実際にはこんなに単純な話ではなくて、現在の広告のあり方が拒否される事態になれば、また違った様態の広告ができてくるのは容易に想像できるし、もしかするともっと巧妙になって、それが広告であると認識するのが難しいようなネイティブ広告が主流になっていくのかもしれない。

今回の事態を招いたのは、追尾型の広告だったり、強制的に再生が始まる動画広告だったり、そういったユーザーに対してストレスを与えるような広告が、野放図に増加してきたことが原因の一つだろうと思う。
これは広告業界が自ら招いた結果でもある。


とはいえこのiOS9で採用された「アドブロック」が現在のウェブ広告の有り様に対して一石を投じることになったのは間違いない。
すでに構築されている広告収入を基礎にしたネットの生態系が、ついに変化を求められる過渡期に差し掛かったのかもしれない。

参考にさせてもらった記事
APPLEくだりて かの広告の建つるサイトとブログを見たまえり。いざコンテンツブロッカーくだり かしこにて彼らの広告表示を乱し、互いに広告収入を得ざらしめん - あざなえるなわのごとし
iOS9 のコンテンツブロッカーでアクセス解析がブロックされたら?というやつ - すなばいじり