ネットの海の渚にて

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そろそろマスコミは情報提供者に対価を支払うよう体制を変えたほうが良いと思う

これを読んだ。
togetter.com
事件や事故に遭遇した人に対して、SNS上でマスコミ各社が一斉に取材要請をかけるという、昨今では珍しくなくなった光景がある。
その際に、情報を提供する代わりに金銭等の対価をよこさないのはおかしいという議論は上記のまとめ記事が初めてではない。

基本的にマスコミは情報提供者に対して金銭を支払わない。
これは昔からの慣習で、金銭を支払うようになると、それを目当てに嘘の特ダネを持ち込む輩が発生するからという理屈だ。
確かにこれは事実だろうと思う。

金銭が発生しなくてもマスコミには、日々何らかの意図を持った有象無象の「タレコミ情報」が舞い込んでいるわけで、そういった情報に対価を支払いますと宣言してしまったらおそらく相当数の金銭目的の捏造情報が持ち込まれることになるのは想像に難くない。


憶えている方も多いと思うが2006年に「堀江メール問題」というのがあった。
これは当時国会で問題視されていたライブドア事件の中で、堀江貴文氏が自民党から出馬した際に、自民党の幹部の親族から3000万円相当の金銭の授受があったことを示すメールが、ある人物によって民主党議員の元に持ち込まれた。

当時人気の絶頂にあった小泉自民党の首を取れると民主党が色めき立った「特ダネ」だったのだが、この持ち込まれた秘密のメールは捏造されたガセネタだった。

まんまとこの偽情報を掴まされた民主党議員はその後自殺してしまうという最悪の結末を迎えることになる。

偽メールを持ち込んだN氏は、捏造情報を売り込んでくる要注意人物としてマスコミ関係者の中でも名が知られていたのだが、そういう曰く付きの人物が提供した情報をあっさり信じてしまった民主党の脇の甘さも当時問題になった。

マスコミ関係にはこういった怪しい人が「特ダネを仕入れたから買ってくれ」とコンタクトを取ってくるのは日常茶飯事で、だからこそ情報提供者に金銭を支払わないという原則があるのは理解できる。


しかし事故や事件の瞬間でしか撮れない写真というのは必ずある。
その瞬間にその場にいなければ絶対に捉えることができない画像や動画がある。
これらは1級の報道資料になりうるわけで情報価値は相当高い。



15年ほど前の話になるがカメラが趣味の後輩がいた。
彼は通勤の際にも必ずニコンの一眼レフを携えるくらいの写真好きだった。
そんな彼が退勤時に自宅近くで火災に遭遇する。
まだ消防車すら来ていない火災発生直後に居合わせた彼は夢中でシャッターを切った。
この火災はかなり大きな被害が発生して翌日新聞の一面に載った。
そのときに添えられた写真は後輩の撮影したものだった。
被害に遭われた方がいるのでこういう書き方は相応しくないが、火災の恐怖や炎の熱さが伝わるプロ顔負けの迫力ある写真だった。


どういう経緯で新聞に写真が載ったのかと彼に聞いてみると、おっとり刀で現場にやってきた新聞社の人から写真を提供してくれないかと声を掛けられたそうだ。
それに応じてフィルムを渡したのだが、謝礼はもらっていないということだった。
ただし、新聞の一面を飾った写真の下に写真提供者として彼の名前が書かれていて、彼はそれがとても嬉しそうだった。


私の後輩はカメラが趣味だが、ただの一般人である。
これがもしプロのカメラマンだったならいくらもらえたのだろうかと考える。

こういった画像や動画は裏取りが必須のタレコミ情報とは性格が違う。
その瞬間その場所に居合わせたということが重要で、後から現場に駆けつけるマスコミにはどうしても撮れない素材が存在する。
こういった素材については金銭の授受があっても良いだろうと思う。
むしろこういった貴重な資料にすらマスコミの大前提を持ち出して頑なに対価を支払わないのは頭が硬すぎる。


いっそのこと情報に対して対価を支払うようにシステムを変えてしまう方が時代にあっているような気がする。
持ち込まれた情報を精査する上で捏造や虚偽であると判明した場合は対価を支払わないということを明記した契約書を交わせば良いのではなかろうか。
情報提供に対してきちんと対価を支払うが、それはその情報が本物であると判明した後であると契約すれば、金銭目的で偽情報を持ち込む輩をある程度抑制する効果もあると思う。