ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

音楽業界は大変そうだなって話

昨日今日と、音楽を話題にしたブログが賑わっている。
発端はこのブログらしい。
2013年のヒット曲にみる「これが日本の音楽業界の現状です」 - コスプレで女やってますけど by 北条かや

炎上しているようなのでざっくりとその炎上の要点を説明するとYouTubeの公式動画をダウンロードして聴いているという一文が問題のようだ。(他にもあるけど)
これが法律に触れるのか否かは門外漢なのでここでは触れない。
それともう一つ引っかかったのは音楽が衰退したのは若者が音楽に金を落とさなくなったせいではなくて音楽業界がオワコンだから若者がそれに金を使わないという論を書いている。
まあ、卵が先か鶏が先かって話とよく似ている。
音楽業界衰退の原因はどこにあるかということだが多分両方なんだろうと俺は思ってる。




自分も最近、音楽に金をかけなくなった。
それは音楽に金を落とすのがイヤになったわけではなく、とにかく昔のように音楽を聞かなくなったからだ。
学生時代はそれはもう音楽には金をかけた。
最初はレコードを買いCDが隆盛を極めると当然そちらに移った。
CDを聞くためにバイトした金でミニコンポを買った。
当時13万円程したが手に入れた時の喜びは一入だった。
それからは時間さえあれば音楽を聞いていた。
CDは最低でも月に一枚は買っていたと思う。
社会人になった頃にはCDショップで2.3万飛ぶこともザラだった。

レコードから音楽観賞という趣味に入ったので今の若い方とは音楽に対するスタンスがちょっと違うかもしれない。
レコードはとにかくデリケートだ。
レコード表面を素手で触れるなんてのは御法度だし静電気防止のスプレーをかけたり埃を取るのに専用のクリーナーでそっと拭ったりしたものだ。
それらの儀式然とした行為を経てようやくプレーヤーにレコードをセットする。
LP。EPによって回転数が違うからそれをまずチェックして慎重に針を落とす。
この時も不用意に針を落とすと針とレコード双方に傷を与えてしまう恐れがあるし、針が乱暴にレコードに触れた際に出る大きなノイズはスピーカーに悪い。(本当かどうかはしらない)
様々な関門を乗り越えて初めてスピーカーから音楽が流れてくるのだがそれは音楽を聴くという行為をある種、権威づけていた感はある。

その後、レコードはCDにうってかわり扱いは随分とぞんざいになった。
CDはレコードに比べて遥かに頑丈で大きさもコンパクトだった。
それまでは外で音楽を聞くためにはウォークマンを使うのだがメディアはカセットテープだった。
コンパクトなCDが発売されたおかげでCDウォークマンも続けて販売されるようになった。
カセットテープはどうしても音質が落ちる。メタルテープという高価で高音質なテープもあったがCDに比べると操作性に圧倒的なハンデがあった。
その後MDやDATなどのデジタルメディアが続々と発売され音楽は家でも外でも気軽に聞くことのできるものになった。
現在ではスマホ等のデジタル端末に数千曲を入れて持ち歩いている人もいるだろう。

便利になった反面音楽を聞くという行為は軽くなってしまった気がする。
レコードの時代は「今から音楽を聴くぞ」というある意味、気合が必要だった。
ステレオの前に座り流れる音楽に耳を傾けたものだ。
今はワンクリックで再生が始まるし、メディアの保存状態など気にする必要もない。

昔は良かったなどと言うつもりは全くない。
あまり聴かなくなったとはいえ、メディアプレーヤーも持っているし便利でありがたいと思っている。
ただし、音楽を聴くという行為は便利になるのに比例して価値は下がっている気がする。
同時にメディアが変遷を辿るうちに音楽そのものの金銭的価値も減っているように思える。

例えばレンタル店でCDを借りる。おそらく100円位だろうか。
善悪の問題はさておき、そのCDを完全にコピーできる環境が身近にある。
今までならばCDを手に入れるには3000円近くの料金を払う必要があるがレンタルからコピーならば100円だ。
安く手に入る手段を知ってしまったら大抵の人は元に戻れない。
それでも大好きなアーティストのCDだけは正規の代金を払って買うという人もいるだろう。

現在は様々な手段で違法にダウンロード出来てしまう。
レンタル代すらいらない。
違法ダウンロードの数は減っているらしいが数字の話では無い。
音楽は極めて低コストで入手できてしまうというイメージは業界に影を落とす。
2500円のアルバムを手にとったとき、その価格が高く感じてしまわないか?
それまでは当たり前のようにその金額を払っていたが場合によっては無料で手に入るかも知れないことをわかっていたならそう感じてしまっても不思議ではない。

業界は違法ダウンロード対策に手を焼いているようだが、たとえそれが成功したとしても業界復活にはならないような気がしている。
音楽は無料で手に入れることができる。
この悪しきイメージは今後もずっと後を引くだろう。

誰が音楽を殺したか? (週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.1))

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