ネットの海の渚にて

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災害時のTwitterについて考えてみた話

山梨で激甚災害とも言える雪害が起こった。
ところがテレビの報道などではそれほど報じられてはいない。(執筆当時)
それに憤りを感じたのかツイッターでは山梨で起きている実情を拡散して欲しいというリツイートを頻繁に目にした。




最初は「そうか山梨はそんなことになっているのか」と思っていたがあまりにも何度も似たようなツイートが回ってくると考え方が変わってきた。

拡散することで全国に山梨で起きていることを報道してもらいたいとの趣旨が書かれたツイートを見るたびに疑問に思う。

報道されると状況が好転するのか?

地方自治体が陣頭指揮をとって救助、復旧にあたるのだが想定以上の雪害によって遅々として進まない。その鬱憤は良く分かる。
しかし報道されることでその状況が変わるとは思えない。

報道を見てボランティアが集まったり物資が送られたりするかもしれないという期待があるのかもしれないがそれは無理だ。
自衛隊ですら現場に入るのに相当な困難が強いられている状態で素人が救助に迎えるはずがない。


自衛隊の協力が必要だから拡散して欲しいとのツイートも見た。
自衛隊への出動要請は地方自治体の首長が要請することになっている。
ツイートでいくら拡散しようともそのルールは変わらない。
そもそも既に要請は出している。
山梨)甲府114センチ、街停止 積雪最多:朝日新聞デジタル
県内のニュース一覧

国からの援助が必要だというツイートもあったがそれも同様だ。

現場はやれることを精一杯やっていたはずでありその成果は決して速報性があるわけではないので、目に見えないもどかしさがこういったツイートに現れていたのだと察するがこれには少々問題がある。


例を出す。

例えばどこかに誰かが閉じ込められているという情報をツイートする。
これを見た他人もリツイートして拡散されていく。
しばらくして拡散されたそのツイートを読んだ人物が親切心から災害本部に通報を入れたとする。
未確認とはいえ通報が入った以上動かなくてはならない。
貴重な人的リソースを割いて現場へ救助に向かうと既に前日に自力で脱出済みなんてことも起こる。
ツイートを遡って調べてみると閉じ込められたのは前日でしかもその後自力で脱出済みですと当人は追加のツイートをしたとしても、救助要請と取られかねないツイートが既に拡散済みであり、それだけがひとり歩きすることは容易に想像できる。

「自力で脱出なう。心配おかけしました。ありがとうございます\(^o^)/」
このようなツイートを当人がしていたとしても、それはほとんど拡散されることなく情報の中に埋没してしまうだろう。


Twitterは速報性が高い反面、一度拡散が始まるとそれをコントロールするのは不可能に近い。
上記の例のようにつぶやいた本人が訂正を出したとしてもそれが同じように拡散され情報を共有することもやはり不可能に近い。

Twitterは確かに即時性はある。しかしそれの訂正や変更が難しい。
3.11の際にTwitterが情報収集に役立ったという話を聞いていたが今回の山梨の災害で少し考え方が変わった。

おそらく今回山梨の情報をリツイートしていた方々に悪気なんかは無いのだと思う。
無いどころか義憤に駆られて正義感や人助けという気持ちからの行動なんだと理解している。
しかしながらそれらの行動が思いもよらないところで現場の邪魔になったり誤情報や既に古くなって現状と違う情報を再生産しているかも知れないということをツイートする前に一度考えてもらいたいと切に願う。


この類のツイートも腐るほど流れてきたがこれを読んで、あるいは拡散することで被災者の状況が好転するとは思えない。
食料が無いこと、流通経路が遮断されていることは既に自治体は把握済みでありむしろこのような情報を流すことで不安を煽り必要のない人たちまで食料確保に走らせる可能性も排除できない。
軽率なリツイートはもしかして害を及ぼすかもしれないと思いを巡らせるのは大切なことだ。
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