ネットの海の渚にて

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ASKA氏のCDを店頭から撤去する是非について考える

君の知らない君の歌
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チャゲ&飛鳥の ASKA氏が逮捕された。それについては説明の必要がないほど報道されているから省かせてもらう。


今回考えてみたいのはこちらの記事だ。

ASKA容疑者の逮捕から2日後の19日、午前中から協議を重ねてきたユニバーサルミュージックが午後4時半、公式HPで対応を発表。チャゲアスおよびASKA容疑者のソロ名義の作品について、〔1〕関連契約(製造権、販売権、非独占的な配信権)の解約または停止〔2〕CD・映像商品全タイトルの出荷停止〔3〕同商品の回収(契約上、当社において回収可能なもの)〔4〕全楽曲・映像のデジタル配信停止を決めた。
回収などの対象作品はCD・DVD合わせて74点。「SAY-」「YAH-」など全盛期のヒット曲の販売権を持つヤマハミュージックコミュニケーションズもこの日、対象商品65点の出荷、楽曲配信の停止と回収を発表した。

チャゲアスが消える?ユニバーサル全契約解約…CD出荷停止、回収も (2/2ページ) - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)はてなブックマーク - チャゲアスが消える?ユニバーサル全契約解約…CD出荷停止、回収も (2/2ページ) - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)

アーティストが逮捕されたから、その人に関する商品をすべて撤去するということだ。
いままで何度も繰り返された現象だ。



以前こんな記事を書いた。
作品と作者は切り離して評価することはできるのかって話 - ネットの海の渚にて作品と作者は切り離して評価することはできるのかって話 - ネットの海の渚にてはてなブックマーク - 作品と作者は切り離して評価することはできるのかって話 - ネットの海の渚にて

作者と作品は切り離すことができるかどうかという記事だ。

今回もASKA氏が逮捕されたことによって、過剰反応とも思える措置がなされている。あくまでもこれは俺の感覚からすると過剰反応だということだ。


なぜ俺が過剰反応だと感じるのかというと、一番はASKA氏はまだ逮捕されただけだからだ。(5月21日現在)
まだ起訴すらされていない。
推定無罪という原則がこの国では守られていない気が昔からしている。
限りなく黒に近いグレーだとしてもまだ彼は裁かれていない。
疑いをかけられているだけであり、まだ容疑者の段階だ。
場合によっては証拠不十分で起訴見送りになる可能性だって僅かにある。
報道から感じる心象としては完全に黒ではあるものの、現時点ではまだ彼は推定無罪である。


推定無罪でありながら早くも社会的制裁ともとれる措置をされることが「過剰反応」であると俺は感じるのだ。


店頭からCDを撤去するのは、ごく一部のエキセントリックな連中にあげ足とり的なクレームを付けられないための安全策なんだろうと思う。
今までだって似たようなケースは多々あった。
そういった過去の事例から学んだ上での判断なのだと理解している。
だからCDショップを責めるようなことはお門違いである。
それは十分わかるのだが逆に「当店は撤去しません」というような気骨のあるお店はないものかと期待してしまう一面もある。
出荷元が自粛するんだから小売側はそれに従うしか無いのだが結果としてある種の「私刑」に加担してしまっている自覚はあるのかと問いたい。


もう一度言うがASKA氏はまだこの時点では推定無罪である。



先日、痴漢冤罪で捕まって長い裁判の結果、どうにか無罪判決を手にした人のドキュメンタリーを見た。
最終的に無罪になるのだが、彼が失ったものは計り知れない。
全くの言いがかりによって冤罪の被害に巻き込まれる可能性は皆に等しくある。

推定無罪という文化がほぼ皆無といっていいこの国において、【逮捕=有罪】の悪しきイメージはいったい誰が作り上げてしまったのか……。


起訴されると有罪率が9割を超える日本の司法制度が世界的に見ても異端だというのは確かにある。(ちなみに不起訴率は50%を越える)
なんでもかんでも起訴すればいいとは言わないが、流石に有罪率が高すぎる。
これは簡単にいえば検察が裁判で勝てると踏んだものしか起訴しないという暗黙のルールがそうさせているに過ぎない。
この感覚が翻って【逮捕=有罪】のイメージを作っているのではないだろうか。


どこかで誰かが逮捕される。
事件の大きさにもよるが名前や職業、年齢などの個人情報が報道される。
そして報道はその後の経緯について継続的に伝えるかというとそんな事はない。
逮捕後の取り調べで起訴されないことも多々ある。
起訴されないということは言い換えれば無罪であるということだ。
限りなくグレーだとしても法によって裁かれないのだから無罪である。
それを気に入らないからという理由で罰を与えるのは私刑にほかならない。
我が国では厳密に私刑は禁止されている。


無罪でありながら報道によって傷つけられた名誉は回復されない。
多くの人はそんな小さな事件であればすぐに忘れてしまうだろう。
けれど近しい人には「あの人は逮捕された人だ」という記憶が残る。
起訴すらされずに無罪だったとしてもだ。
逮捕された事自体が禁忌されることとして認識されてしまっている。


【逮捕=有罪】ではないのに、ASKA氏のCDは撤去された。
そういう行動はせめて有罪判決が出てからにしてもらいたいのだが、世間がそれを許さないのだろう。
こういう事件が起こるたびに、この国に推定無罪という考え方が根付くにはまだまだ時間がかかるのだと感じざるを得ない。


余談になるが、万が一、ASKA氏が無罪だった場合、商品を撤去させたレコード会社にASKA氏が損害賠償請求をすることは可能なんだろうか?
結果として無罪だったにせよ逮捕されるようなことをしたのだから、撤去にまつわる損害をレコード会社側がASKA氏に支払えということになるのだろうか?
このあたりはよくわからないので詳しい人に解説してもらえたら大変嬉しい。

僕にできること いま歌うシリーズ

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  • アーティスト: ASKA,岩谷時子,高橋掬太郎,永六輔,門谷憲二,G.Sinoue,松本隆,北山修,山上路夫,Tomoji Sogawa,澤近泰輔
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル シグマ
  • 発売日: 2013/03/27
  • メディア: CD
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関連リンク
ASKAの逮捕に伴う当社の対応について - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
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