ネットの海の渚にて

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UPQがスタートアップ企業だから大目に見ろというのは難しい

【ニュースの視点】UPQはディスプレイの仕様誤記についてどう対処すべきだったのか ~ものづくりの姿勢に関する大河原氏、笠原氏、山田氏の視点 - PC Watch

誤表記に対する詫びとして2000円のAmazon券で終わらそうとしている例のモニターはAmazonなどの、主にネット通販という形で販売された。

商品ページをいくら読んでも「このテレビを開発したのはスタートアップ企業なのでスペックの誤表記があるかもしれません」とは書かれていない。

百歩譲ってもしそういう意味合いのことが注意書きで表記されていたとしたら、


という擁護もあり得るかと思うが、実際はそんな注意書きなど書いてあるわけもないし、消費者としては商品ページに書いてあるスペックを信じて購入するしかない。
通販というのは現物を確認できないわけだから、商品の説明を信じるしか無い。
特にモニター選びの際にリフレッシュレートの数値はかなり上位にくる重要な機能だし、これが120Hzだったから購入を決めたという人も多かったと思う。

つまり4Kで120Hz駆動の50インチモニターであの価格というのは、本当に驚くくらいの画期的な商品だったわけだ。
ところが実際は60Hzでしたと言われた購入者は騙されたという感想を持ってもおかしくない。それくらい致命的な誤表記だった。
例えば、スペック表記と実物で横幅が1cm大きかったですとか、重量が1kg重たかったです、のような内容なら大目に見てくれる人は多いと思うが、やはり売り文句であった120Hz駆動が間違いだったというのは擁護できる要素がない。


その商品にとってクリティカルな機能が間違っていたというような大きな過失を、「スタートアップだから」「まだ若い経営者だから」といって擁護するのは流石に筋が悪い。
これらの擁護は逆を返せば、そういう会社の商品を買ってしまったのは消費者のリテラシーが低かったからであり、自業自得なのだから不満を言わず我慢しろということになってしまうからだ。

スタートアップの商品やイノベーションに長けた若い会社であることを免罪符にしてはいけない。
なぜなら最初に書いたようにこの商品は、販売ページにその種のリスクが有るとは書いていないからだ。

一般消費者は投資家とは違う。
モニターを買おうと思うときに、その会社の設立の経緯や資金繰り、過去に販売された商品の不具合や誤表記まで調べて買うようなことはしない。
あの販売ページを見ただけではこれがスタートアップの会社でありしかも前科があるということに気が付かない。
そこまで調べるのが消費者のリテラシーだとするなら、あまりにその要求は高すぎる。


もちろん無名の新参メーカーがあまりに相場からかけ離れた安い価格の商品を売り出したら「なんとなくあやしい」と感じとるセンサーは大切だ。
だけれども気が付かなった消費者側にも一定の責任はあるとして共犯関係に仕立て上げるのはやはりおかしい。


停滞しがちな業界にイノベーションを巻き起こす若い経営者を応援するのは大変有意義である。
ただしその応援というのは甘やかすこととは違う。



ゲームの業界には開発中の段階で販売してしまうというやり方がある。
例えばマインクラフトというゲームはノッチ氏を中心にわずか数人で始めた極小のゲームメーカーであったけれど、α版のころから細々と販売を初めて資金を得ながら開発を進めていった経緯がある。
その後、β版になったころニコニコ動画なんかを中心に国内で一気に流行した。
今では世界中で遊ばれているお化けゲームになった。
これは資金繰りが厳しい小さなゲーム会社でも資金を得ながら完成版へと開発を継続することができるという仕組みで、おそらくその中で最も成功した例がマインクラフトだと思う。


今一部の界隈で非常に流行っているゲームがある。
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS

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PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS on Steam

このゲームもマインクラフト同様、開発段階で販売している早期アクセスのゲームである。
販売ページにこれは「開発中のゲーム」であると表記してある。

さらにこんな文言まである。

今すぐアクセスしてプレイ開始;開発途中のゲームに参加しよう。
注: この早期アクセスゲームは不完全であり、これから変わることも、変わらないこともありえます。現時点でこのゲームをプレイしても満足に遊べない場合は、 ゲームの開発が更に進捗するまで待ってみる必要があるかもしれません。

詳細ページにまで飛べば更に詳しく説明されているが要はこのゲームはまだ未完成であるという宣言だ。
つまりこのゲームを買うということは開発者を応援するという行為であり、さらにゲームのフィードバックを送ることでお互いにより良いものを作りましょうということになっている。


発売からわずか2週間で100万本を売り上げたこのゲームは、実際に遊んでみるとわかるがバグが多い。
ネット対戦のゲームなのにいきなり回線が切れることも頻発している。
それでも多くの購入者は返金騒動を起こすようなことは無い。
なぜならこのゲームはまだ開発段階のゲームであり、バギーで未完成な状態であるとわかった上で購入しているからだ。


話をUPQに戻す。
業界通の方ならUPQがかなり危なっかしい商売をしていたのはわかっていたはずだ。
けれど一般消費者はそこまでアンテナが高くない。
Amazonの販売ページを見てもUPQがそういう会社だからこの商品にはリスクが有るとは書いてない。

もしどうしてもUPQの今回の騒動を擁護するなら、今後はベータ版のゲームを売るときのように「この会社はまだ開発段階です」と販売ページに表記することを義務付けていただきたい。
そうでもしなければ消費者が安心して買い物ができない。