ネットの海の渚にて

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若者のクルマ離れ論に感じるモヤモヤ

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photo by christopherallisonphotography

これ読んだ。biz-journal.jp

この記事によると若者の車離れは運転に向かない国民性からだという。

うーん。
しっくりこない。

若者が車を買わなくなったのは、車の魅力が減ったとかそういうマクロな話じゃなくて、もっと単純に昔に比べて貧乏になったからだと思う。

若者が貧乏なのは昔から変わらないけれど、最近の貧乏は少々事情が違う。


私が若かった頃も、若者はもちろん貧乏なのだけれど、それはあくまで現状が貧乏なだけであって、このまま働いていけば給料は上がっていくし、ボーナスだって夏冬もらえる。
そういった安定があった時代だから手元にお金がなくてもローンを組めた。

それはもちろん今の若者だってローンくらい組めるのだけれど、決定的に違うのは自分の将来への不安感だ。
今よりも収入が上がる保証もないし、下手をしたらボーナスだって出ないかもしれない。それどころかリストラの可能性さえある。
そんな不安を抱えながらローンを組むのは現実的ではないという判断が働くのは必然だろう。
今の若者は私が若かった頃よりもはるかにシビアに現状を分析しているのだと感じる。
振り返ってみると昔は「ローン組んでもなんとかなるさ」くらいの感覚で36回ローンとか60回ローンを組んでた気がする。


私が初めて車を買った時はバブルがはじけた直後だったとはいえ、まだそれほど不況の実感はなく、むしろローン金利が下がって車が買いやすくなったくらいの印象だった。
実際周りの同年代も次々と車を購入していった。
私の住んでいる地域が車社会という面は確かにある。
公共交通機関があまり発達していないから、車がないと途端に不便になる。

遊びには車が必須というような田舎だから、無理をしてでも買うのだけれど、最近の若者はやはり車を買わない。

私の若い頃に比べて交通機関が発達したわけではなくて、むしろ赤字路線のバスが廃止されたりして昔に比べて不便になってる。
なのに車を買わない。

車がなくても自転車や、原付きがあればとりあえず困らない。
身近の若者に聞くとそう答える。

私の若いころは女の子とデートするときに車が無いというのが、イメージ出来ないくらいに依存していたから、今の若い子が車なしでどんなデートをするのかちょっと興味があるけれどそれはまた別の話。





実際は車が無いと生活が成り立たないというほど交通機関が破綻しているわけではないから、車がなくても生きていける。

私の世代は、就職したら車を買うというのが常識のようになっていたし、車を使ってナンパをしたりしていたから、持っていないと諸々不便だった。
それどころか男なのに、いい年をして車の一台も持っていないと周囲から訝しがられるようなことさえある。
都会では考えられないだろうが田舎ではこういう空気があったのだ。
だから車を持たない暮らしということを考えたこともなかった。


当時の女の子は車種によってナンパの成功率がガラリと違ったのは事実としてある。
当時のナンパ車と言ったらプレリュードやソアラが代表だった。
お金がないと一段落ちてインテグラやカリーナEDとかで、もしくはライトウェイトスポーツカーだったりもする。
ちなみにナンパ車と言うのは伊達じゃなくて、運転席側からでも助手席の背もたれを倒すレバーがなぜか操作できたのだ。


今思うとくだらないことだけれど当時は必死だった。
女の子を誘うアイテムとして車の影響力はとてつもなく大きかったからだ。
20代前半の時分は女の子とどうやって仲良くなるかということが最大の関心事で、そのためなら60回ローンも辞さないという空気があった。

ちなみにこれらは、今で言うマイルドヤンキーそのものの中に私がどっぷり浸かっていたからこその思い出であって、大都市に住んでいた同年代とは多少事情が違うだろうとは思う。

こちらで言うナンパスポットと言うのは、車で入れる砂浜で駐車して待っている女の子の周りを、車でグルグル回って声をかけるのが主流なのだからまるきり文化が違う。
女の子と遊ぶためには車がどうしても必須だった。
だから車を持たないという選択肢が存在しないに等しかった。


時代は下って現代になると職場の若い子の車の所有率は低い。
先に述べたように自転車やオートバイを足にしている。

車という所有しているだけで金を食う「足」は今の若者にとってメリットよりもデメリットが大きいのだろう。
ドライブするのも昔に比べたらガソリンの値段だって比べ物にならないくらいに高くなっている。
今では信じ難いが、ガソリンが1リットル80円代の時代があったのだ。

給料は20年前と同じ年令で比べたらその水準はほとんど上がっていない。
むしろリストラや非正規雇用などが増えたから、社会的弱者である若者の収入はおそらく減っているのだと思う。


車離れの主な原因は若者が貧乏になったことだろうと思う。
さらに車以外の金の使い道も増えた。
スマートフォンの維持費だけでも月額1万円近く払っている若者も多いと聞く。
昔の若者だって車を維持するのに四苦八苦していたわけで、そのプライオリティーがスマホに負けたということなのだと思う。


仮に今の若者の収入が2倍や3倍になったなら車は売れる。
実際にお金持ちを見てみればわかるが、まず間違いなく車を所有している。

金持ちは、車だけでなく更に金があれば船(クルーザー)を買い、それでも満足できなければ自家用ジェットを買う。
自由になるお金が増えたら人間は乗り物を買う生き物なのだ。

結局買わないのはお財布事情を鑑みた上で、金額に見合うだけのメリットが見いだせないだけだ。


車業界は「若者の車離れ」などと嘆いていないで、若者の収入を2倍3倍に上げる策を打てと政府に嘆願したらいい。
万が一それが成功したなら車は飛ぶように売れる。