ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

スーパーはあらゆる人が集まるからいろんなトラブルが発生する場所ですよって話

この記事を読みました。

記事から一部引用します。

あのね、今日、私は勤務中でご利用者様に買い物を頼まれスーパーに行ったんです。
私はそこでパンを買うという、至ってシンプルな業務なんですけど、店内に70歳ぐらいの女性がね、居たんです。
その女性はね、空っぽのお弁当容器とレシートを片手にイライラした様子だったの。

(中略)

その女性が怒ってるのよ。
「別にね、おんなじなんだから変えたっていいじゃん!値段だって同んなじなんだから!!!」
と、レジのお姉さんに怒鳴っているのね。

(中略)

「さっき○○弁当を498円でレジを通して買った。でもそのあとに△△弁当が食べたくなったの。だから交換したの。」
「おんなじ値段だよ。498円で。私は何が悪い?あんたどう思う?」ってめっちゃ怒ってらっしゃるの。
「お店の人に許可を取ってから交換したんですか?」って聞いたら、「いま食べ終わったからレジに言ってるの」って仰ってて。

一度レジを通した○○弁当をお店に許可を取らずに、要は勝手に△△弁当に交換し、それを店内かどこかで食べ終え、お店の人に自分から食べた後にレジに言いに行ったみたいなんだよね?

あんずさんは福祉関係のお仕事をされているので、この記事に出てこられるような、何らかの障害をお持ちの方、あるいは精神的に不安定な方とお付き合いがあって、手と手が触れる距離で実際に日々接しておられる方です。
ですから私のような全くの素人とは違って、どちらかと言えば記事の登場人物側の視点で世界を見ることが出来る方です。

そういった視点から語られている記事ですので、どうしても店側からの視点が抜け落ちている。私はそう感じましたので長年に渡って接客業に携わった経験から、店側の視点や事情を語りたいと思います。


あんずさんの記事に登場したようなお客さんというのは、実際の現場を経験していると思いの外多いことに気が付かされます。
私は10年の電気屋勤務経験がありますが、その前にスーパーでのバイト経験もあります。

スーパーと言うのは電気屋と比べ物にならないくらい、様々な階層のお客さんが来店します。
それは食料品というメイン商材の特性上、ほぼすべての人が利用するわけでその頻度も極めて高い。

例えば高級レストランと言うのはその金額設定の高さから、来店する客のフィルタリングが無言のうちに行なわれています。
誰しもが訪れるファミリーレストランが憩いの場になりづらく、横暴な客やマナーのない客の問題行動が度々話題になるのは周知の事実です。
高級店というのはそういった客がこないという安心感が、サービスのひとつになっている側面を無視できません。



スーパーやコンビニというのはその業種の性格上、様々な階層の人たちが毎日に近い頻度で利用する場所ですので、いわゆる「問題行動」をおこすお客さんの来店する率も極めて高いのが実状です。

毎日のように来店して繰り返される問題行動。
それを見かけた他のお客さんからすれば珍しいものに見えるかもしれませんが、店員からしたら悪い意味で見慣れた光景なのです。

その店員さんは、今回が初めてなわけじゃなくて、もう何度も起きてることだから困っちゃう!と言いながら会計してくださったんだけど。

レジのお姉さんは、その女性をガン無視だったのね。

でもさ、498円払ってるお客様じゃない?
無視はどうなのかなー?って。


この店員の行為はとても褒められた態度ではありませんが、私も同じような経験を重ねていますので気持ちは痛いほどにわかります。


このディスコミュニケーションの典型例のようなケースが起きてしまう背景は、店員側がそういった「問題行動を起こす客」が抱えているなんらかの事情を理解していないからです。
そのお客さんが何に対して憤りを感じているのか、しっかり対話をして聞き出せば問題は解決するかもしれませんが、現実問題としてレジ打ちの仕事をしている人がカウンセラー的な仕事までしろというのは酷だと思います。

先にも説明しましたが、生活必需品を扱う業種は特に普段なら交錯しないであろう人たちと接触してしまう現場です。
私がレジ打ちのアルバイトをしている時も毎日のように絡んでくるご高齢の女性がいました。
購入前の大福やおまんじゅうを食べながら店内を徘徊し、レジに割り込んで私にその食べかけの大福を投げつけて意味不明な暴言を浴びせてくる毎日でした。
初めて目の当たりにした時は面食らいましたが、それを毎日繰り返されるといつの間にか慣れてきます。
むしろ事情を知っているお客さんから同情される場面も多々ありました。

半年ほどでその大福を投げつけてくるお客さんは来店されなくなりましたが、風のうわさできいたのはある病院に強制入院させられたとのことでした。

例にあげたのは一番インパクトのあるお客さんでしたが、それ以外にも偽物の手作り商品券を持ってきて使わせろとゴネるお客さんや、大量に買ったものを一時間後くらいに全部返品することを毎日繰り返す人。雑誌棚にある袋とじを全て開けてしまうおじいさん等々。こういった変わったお客さんはそれほど珍しくありませんでした。


日々の業務がびっしりとある中で、応対に苦慮するお客さんというのは一定数います。
ある程度はマニュアルで決まっているとはいえ、実際の現場では想定しているケースに当てはまるほうが珍しくて、各個人がそれぞれの裁量で判断しています。
そういった事実を勘案すると、あんずさんの記事に出てきたレジの女性店員の行動も致し方無い気がします。

もちろん地元の民生委員や役所の福祉課なんかと連携が取れれば一番なんでしょうが、スーパーの従業員にそこまでやらせるのかという問題は残ると思います。


老人向けの弁当宅配サービスが宅配だけにとどまらず、独居老人の健康状態をチェックするという付加価値に、一定のニーズがあるのはご存知だと思います。
離れて暮らす家族の代わりに毎日宅配で訪れる配達人が、老いた親の様子を確認してくれるサービスと言うのは、これからもっと需要が増すことは間違いありません。

あらゆる人が利用するスーパーだからこそ、セーフティーネットから漏れてしまった人も来店されます。
そういった方々を見つけ出して、それぞれのケースに見合った福祉サービスに橋渡しをするということは、スーパーの業務から大きく逸脱しているとはいえ、これからの超高齢化社会、そして社会貢献という見地からひとつの可能性として提案してもいいのかなとは思っています。