photo by brizzle born and bred
インターネット全盛時代になると情報は自分が選択して摂取するようになる。
目の前のスマホを眺めたって何も起こらない。自分から「何か」を入力しなければ情報は降りてこない。こちらから情報を取りに行く。
当たり前の話なのだがこれが一昔前は違った。
俺が子供の頃の情報源と言ったらテレビがほぼ全てであって、残りは図書館で眺める様々な図鑑だったり「ひみつ」「ふしぎ」シリーズだったりした。
漫画で学ぶ~~シリーズもよく読んだ。
テレビは自分から何かを入力する必要は無い。
せいぜいチャンネルを変えるか電源を切る位の選択しか無い。
出来合いの情報が一方的に流れてくる。それを受け止めるのが普通だった。
流行り廃りというのはテレビが作っていたと言ってもいい。
小学3年生の頃にガンダムのプラモデルが大流行した。
それこそ主役の「ガンダム」が欲しいのだがおもちゃ屋で売っているのは「ジム」だったり「ボール」などの不人気モデルばかりだった。
それでも稀に少数は入荷するわけでその情報が学校内でやり取りされていた。
「〇〇模型店にガンダムが今日入荷するらしい」
嘘か真か分からないこんな情報に踊らされてその模型店に足を運ぶのだがもちろん入荷なんかしていない。
いんちき臭い情報に躍らされるのに疲れ果てるのだが、中には本物の情報が混ざったりするので全てを無視するわけにもいかなかったりするのがもどかしかった。
この時に「インターネット」があったらどうだっただろうか。
今のようにスマホがあって気軽に検索できたならば「ガンプラ」の売っている店をすぐさま検索していただろう。
すくなくても自転車で1時間かかる、となり町のおもちゃ屋まであやふやな情報を元に行くことは無かったと思う。
学校内に流れていた出所不明なうわさ話よりもネットの情報の方がいくぶん真実味がある。
もちろんネットがあれば便利なことは間違いない。
いまさらネットの使えない環境に身を置けるかと問われたら難しいだろう。
それほどまでにずっぽりとハマってしまっている。
だからこそ思うことがある。
ネットネイティブと呼ばれる世代が出てきたわけだが、彼らは子供の頃から自分の好む情報だけを摂取してきている。
俺が子供の頃は同年代はほぼ同じものを見て聞いて育ってきた。
もちろんこれはいいことばかりじゃない。
金太郎飴的情報と言ってもいい。
けれどこの共通体験というのは悪いことばかりでもない。
我々の世代であれば「ドリフ」や「ひょうきん族」の話題で盛り上がることができる。
俺の一世代上の女性だったらまず間違いなく「ピンクレディー」が振り付きで踊れる。
こういう世代間の共通認識っていうのはネットネイティブ世代になると相当希薄になるんだろうと思う。
そもそもテレビという圧倒的な影響力を持ったメディアが影を潜めたのだから必然なのだが、興味のあるものが分散してしまうことは多様性がある反面、寂しいことのような気もする。
俺ら世代は情報の中心にテレビがあった。
そこから流れる情報は速やかに共有され次の日の話題になった。
ドリフのコントの真似をして先生に怒られることも多々あった。
逆に言うとテレビを見ていなかったら話題についていけない危険性すらあった。
教育方針だったのか当時からテレビを厳しく制限されていた友達もいて子供ながら「ヒゲダンス」すら見たことのなかった彼に同情したものだ。
彼はドリフの話題になるといつもつまらなそうにしていた光景が思い出される。
趣味嗜好が多様化している昨今、テレビのような絶対的なメディアが衰退して過去の同世代が共有したような体験は無くなってしまうのだろうなぁと思う。
画一的な情報にしか触れられなかった時代よりも今の情報化社会のほうがいいことは多いのだろうけれど、子供の頃の思い出話に共通項が見いだせなくなる世代が出てくるのは、なんとなく寂しい気持ちがするけれど多分そんなことは、昔をありがたがるセンチメンタリズムでしかないんだろう。
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