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ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

業務上起こしてしまった失敗による金銭的損害を個人に負わせることには反対したい

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このニュースを読んで思い出したことがある。
headlines.yahoo.co.jp

<プール水流失>「個人に弁済させるべき?」 教諭ら全額負担で波紋 /千葉 (千葉日報オンライン) - Yahoo!ニュース

業務上の失敗の責任を個人に還元させる悪しき前例になりかねないから撤回して欲しい

2016/02/26 12:30

もう10年ほど前の話だ。
その当時私は、原付き(スーパーカブ)に乗って一日あたり数十件の客先に訪問するという業務をしていた。
乗車頻度としては1ヶ月あたり1000~1500kmくらいは走行していた。

それだけ毎日長時間乗っていると当然ながら事故も起こる。
もちろん常に気を張って安全運転に集中していたけれど5年の間に1回だけ事故を起こしてしまった。

いや、こう書くと私の不注意で事故を招いたように見えるかも知れないが、実際の事故の状況はこうだ。


大きな街道を走行中に私の右横を並走していた普通自動車が、ウィンカーも出さずにパチンコ店の駐車場に入るためにいきなり左折してきた。
私は急ブレーキをかけたが間に合わず自動車の側面にハンドルエンドをこすってバランスを崩し歩道にバイクが乗り上げる格好になったが、私はすんでのところでバイクから飛び降りたので大した怪我は負わないで済んだ。
それでもおそらく車体に強くぶつけたのだと思うが右足の太ももとスネにかなり大きな内出血の跡があったし、ハンドルと車体の間に挟まれたらしく右手の小指が激しく傷んでペンが持てないくらいに腫れた。

今になって思うがそのとき病院に行って人身事故にでもしてやればよかったのだが、事故の際、降りてきた相手ドライバーが顔を真っ青にして「あなたの姿が死角に入っていて気が付かなかった。悪いのはすべて自分である」と平謝りしていたし、その瞬間は痛みを感じていなかったのもあって、とりあえず保険屋さんに任せましょうと言って連絡先の交換だけしてその場をあとにしてしまった私の判断が悪かった。

その日はどうしても断れない客との約束もあったし繁忙期で事故処理なんかに時間を取られたくなかったのもあった。
ただ、その日の夜、家に帰って風呂に入った時に大きな内出血の跡をみて実はかなりヤバイ事故になっていてもおかしくなかったと急に怖くなったのを思いだした。


翌日に会社から事故の報告書を書いて提出しろと言われたので図解入りで書いた。
もうあとは保険屋同士で勝手にやってくれるだろうと思っていたのだが、2週間ほどしてから総務部から呼び出しがあった。
私はてっきり10対0で向こうが悪いと思っていたのだが、保険屋同士の話し合いの結果、8対2になったと告げられた。
「いやいや、事故の時相手が全部自分が悪いって言ってましたよ」と私は抗議したのだが、どうやら相手ドライバーが翻意したらしい。
ドライバー曰く、ウィンカーも出していたし充分減速をして左折しようとしていたところに、私が突っ込んできたという話になっているらしかった。

それを聞いて「自分が悪いとドライバー本人が言っていた」と猛抗議したが、そんなことは言っていないという水掛け論になって突っぱねられたらしい。
「ここまでコケにされたら保険屋を通さず俺が直接本人と話をするわ」と私は会社に言ったのだが、それだけは絶対にダメだと釘を刺された。

結局相手の言い分がある程度通ってしまって2割程度私にも過失があると認定されてしまった。
私としては忸怩たる思いだったのだが、もうこれ以上抗議したって埒が明かないし、なにか好転する兆しも見えなかったから我慢するしかなかった。
これで終わりならまだ良かったのだが……。






この事故があったのは3月で事故割合の決着がついたのが8月。もう終わった話だと思っていた。
その年の暮れ、事故のことはもう忘れかけていたあるときに上司から呼ばれた。
冬のボーナスの支給日だった。
ボーナスの明細を直接手渡されて、中身を確認するように言われた。
ボーナスと言ったって封筒の中には明細書が一枚ペラっと入ってるだけだ。それに目を通すといつもとは違う見慣れない控除の項目があった。

どういう文言が書かれていたか、もう正確には覚えていないが、事故を起こして会社に損害を与えた場合にその半額をボーナスから天引きするルールがあるのだとそのとき初めてその上司から告げられた。
確か7~8万円ほど引かれていたと思う。
相手側の車の、前のドアと後ろのドアを板金修理した結果、その金額を過失割合で計算して会社と折半するとそうなるらしい。(ちなみに事故相手の車はベンツ)


事故の過失割合だけでも不本意だったのに、さらに業務上起こった事故に対してその損害金を社員個人と折半するという、俄には信じられないようなことが目の前で実際に起こっていることに心底驚いた。
こんな理不尽なことがまかり通っていいのか。上司の顔面を睨みながら怒りとかその他諸々の感情がないまぜになって頭がクラクラしてきたのを覚えている。


席に戻って過去に事故を起こしたことがある同僚に聞いてみると、やはり同様にボーナスから天引きされたという。
私は知らなかったがこの会社はこういうルールが昔から罷り通っているらしい。

こういうことが法律で認められているのか、逆に禁止されているのかは素人なのでよくわからない。
けれど、個人的な感覚だけでいうならば、会社は従業員を守るのが普通ではないだろうか。
もちろん飲酒や禁止薬物を摂取した酩酊状態で事故を起こしたような場合は仕方がないとしても、日常の業務をこなす上で会社から指定されているバイクや車を運転中にやむなく事故を起こした場合に、その金銭的な損失を個人に還元して負担させるのはおかしいと私は思っている。

なぜなら、万が一でも事故を起こしたくないから客周りの業務は全部公共交通機関を使いますと従業員側が言い出したとしても、それを会社側が認めるわけがないからだ。
設定されている一日に廻れる客数というのは、フットワークが軽いバイクだからこそ可能な数字であって、それをすべて公共交通機関と徒歩に置き換えたらまったく達成できない数字になる。
つまり会社の利益を確保するために従業員側は事故を起こした場合にその損失を支払わされるというリスクを常時背負わされている格好になっている。
明らかに不公平だと感じた。


車やバイクに会社は保険をかけているはずなのになぜ社員に負担させるのか。
もしこの考え方が許されるとするなら保険なんて最初からかけなければいい。
保険の掛け金が無駄になるからいっそのこと事故を起こした社員に全額負担させればいいじゃないか。
そして当社はそういう会社で御座いますと世間に告知しろ。

とまあ、こんな感じで会社に抗議したが当然聞き入れてもらえなかった。
それでも納得ができないと言って食い下がっていると、事故を軽々しく考えないようにするための懲罰的な意味合いがあるのだと言われた。


もちろん今回私が書いた事故の件と冒頭の記事にあるプールでの事故とは状況が違う。
確かに状況は違うけれど、故意ではなく業務上起こしてしまった失敗で生じた損害を個人に負わせるような風潮が万が一はびこった場合、それはきっとまわりまわって私達の首を締めることになる。

だから私は自分の経験も加味しながらこういった風潮には反対の意見を示していきたいと思っている。