ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

秋は好きな季節のはずなのに……。

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photo by peaceful-jp-scenery

夏の厳しい暑さや、冬の身を裂く寒さに比べると、春と秋は過ごしやすい。

春は新緑が息吹いて生命の神秘を感じられるし、秋は夏を乗り越えた作物がたわわに実って自然の恵みを感じられるとてもいい季節だ。

だけれど春のさくらが咲き誇る時期は同時に杉花粉が舞う。
俺は重度の花粉症患者だから春は死ぬほど嫌いだ。
正確に言えばスギ花粉が嫌いなわけだが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという論法で春が憎い。

だからもう一つのいい季節である秋が好きだ。
四季のなかで最も好きなのが秋であるはずなのだがこの季節。いい思い出があまりない。
いままでお付き合いした女性と別れたのはそのほとんどが秋だ。
俺にとって秋はなぜか別れの季節なのだ。
この時期になると、そういった心がチクチクする思い出がいやでも蘇る。



秋には独特の匂いがあって、それは道端に居並んでいる金木犀だったり、田んぼで干されている稲わらの匂いだったりする。
匂いと記憶は強く結び付けられているから、ある種の匂いを嗅ぐとその時の記憶が呼び起こされる。


繁華街の歩道には街路樹としての金木犀が植えられていて、この季節になると薫ってくる。
手を繋いで歩いた光景や道路端で喧嘩したこと。
そういった記憶が一人で歩いているのに次々と思い出されて胸が苦しくなってくる。

誰かとお付き合いして別れたということは、その人を幸せにすることが出来なかったということだ。
愛した人を幸せにしたいと心に誓ったのに結局は終りを迎えてしまう。
そんなことを今まで何回も繰り返してきた。

そういう後悔や自責の念みたいなものがどどどっと押し寄せてきて、秋になると途端に具合がおかしくなる。
寂しさや虚しさに雁字搦めにされてしまって身動きができなくなる。

秋はいずれ終わって冬がくるわけだけれど、独り身にとって最もつらい季節は冬なのだ。
今年はどうやって乗り越えていったらいいのか、今から気が重い。