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ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

柔道のルール改正で「小内巻込」が禁止にされて思うこと

http://www.flickr.com/photos/49503154222@N01/5808258193
photo by marcoderksen

こちらの記事を読ませていただいた。

柔道のルール改正2014で注意するべき技や試合展開まとめ - nerumae

上記の記事内でも貼られているが卯野さんとTwitterで、柔道のルール改正について話をさせていただいたが、その時からずっと気になっていた話題である。

はっきりと覚えてはいないけれど、一時期柔道の国際大会はレスリングと見間違うほどに「タックル」が猛威を振るっていた。
記憶違いなら大変申し訳無いが、特に旧共産圏の選手達が両手刈りや、すくい投げなどを多用してドンドンと上位に食い込んできた時代があった。


柔道の技術で組手争いというのがある。
地味な攻防だから見ていて楽しいものではないけれど、あれはその後の繰り出す技への布石であって大変重要なものだ。
とても地味ではあるが組手争いで優位に立てない場合、試合そのものが大変苦しくなる。
例えば奥襟を掴んでから繰り出す技を得意としている者は、当然そこを狙ってくる。
受ける方はどうにか奥襟を取らせずに、自分の有利なポジションを取るかという駆け引きが行われている。

ところがある時期の国際柔道では、出会い頭にいきなり足にタックルでもするかのごとく低い姿勢から足を抱え上げて投げるようなシーンが目についた。

誰かが「道着を着たレスリングだ」と言っていたが確かにそう思った。
組手争いで有利に立てないなら組手不要の技で勝負しようとしても不思議ではない。


柔道の魅力は切れ味鋭い投技にある。
釣手と引手がきっちり決まればあとは相手のバランスを崩して投げる。

「柔よく剛を制す」というのは小さな者が自分より大きな者を投げることだ。
柔道ではそれが可能だ。
相手の力を利用して小柄な者が大きな相手をぶん投げることができるのは、柔道そのものが持つ技術体系が素晴らしい結果である。



ものすごく大雑把に分けると柔道の投技には、手前に引っ張って投げる技と向こう側に倒す技の2つに大別できる。
卯野さんと話すきっかけになった「小内巻込」は向こう側に倒す技だ。
この技は普通に相対している時には、そう簡単には決まらない。
ところが流れの中から繰り出すと恐るべき切れ味のある技に変貌する。

「小内巻込」は手前に引っ張る技の代表格である「一本背負い」と大変相性が良い。

背負投をかけられた場合は腰を落として後ろに体重をかける。こうすることで相手の背負投は不発に終わる。
もちろん左右にずらして逃げる手もあるが、小兵相手に懐に潜られて背負いをかけられたら、大抵の場合腰を落として後ろに体重をかけるのだが、そのタイミングに合わせて小内巻込に変化されたらひとたまりもない。

背負投をかけることで相手の体重を後ろにかけさせる。
そのタイミングで一気に小内巻込で仕留めるというのはまさに「柔よく剛を制す」の典型例だ。

この動画が大変わかりやすい。

【26.6.22】一本背負いとみせかけて小内巻き込み - YouTube



俺の観測範囲内の話だが「小内巻込」を得意技にしていたのは小柄な選手が多かった。
大柄で手足が長い選手が内股を得意技にするように、小柄な選手はその体格を逆に武器にできるような技があるところも柔道の魅力の一つだ。

力では敵わない相手でも、バランスを崩して相手の力を利用すれば自分より二回り大きな相手からだって一本が取れる。

俺は体格が大きかったから、小さな相手とやる際に懐に潜り込まれて切れ味するどい「小内巻込」をかけられて天井を見させられたことは沢山あった。
正直言うと大嫌いな技だった。


しかし小内巻込は柔道の真髄が詰まったとても美しい技だ。
それが実質禁止技になってしまうのはとても惜しい。
http://www.flickr.com/photos/49503154222@N01/5808812058
photo by marcoderksen


ルールが時代とともに改正されるのは仕方がない。
熾烈な組手争いを嫌って足を掬う攻撃にシフトするのも、その時点でのルールを最大限利用したわけで問題ない。
けれどあたかも道着を着たレスリングかのような「JUDO」でいいのかという問題は残る。
だから着実にルールは改定されていって、あくまでも「柔道」であろうとする。
その弊害として小内巻込という美しい技が禁止されるのは本末転倒でしかない。

とは言え小内巻込のように場合によって足をつかむことが含まれるような技を許可していると、またレスリングに見間違うような「JUDO」になりかねない。

「柔道」としての体裁を守るのか、それとも「JUDO」として新たな道を選ぶのか。
大変悩ましい。

参考リンク
「一本を取る」見栄えのする柔道へ。新ルールに日本は対応できるか?(1/3) [オリンピックへの道] - Number Web - ナンバー
【国際柔道連盟試合審判規定】新ルールに関してよくある質問(10.5.27) | 全日本柔道連盟