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ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

電化製品の修理って高く感じるよねって話

コラム

今日見かけたこの記事。
d.hatena.ne.jp
9年も前の記事が今更発掘されてバズっている様子。
上記の記事を簡単に要約するとメーカーに修理を頼んだら9000円かかると言われたが、自分で直したら420円で済んだ。そんな高い修理代金を要求するメーカーはもっと顧客満足を考えたほうがいい。というブログ主さんの御意見。


このブログの読者であればご存知だと思うけれど私は10年ほど電気屋で働いていた。
店頭で販売もやっていたし、エアコンやアンテナの取付け工事や壊れた家電製品の修理もやっていた。
上記のブログで書かれているように「たったこれだけの部品交換でこんなに修理代とるのかよ(怒)」みたいなことは結構頻繁にあった。
上記のブログ主のように自分である程度いじれるお客さんのほうがそういったクレームを入れてくる確率も高かった気がする。


記事によるとDVDプレイヤーの故障箇所は電源ユニットとのこと。
おそらくメーカーサービスとしては電源部の基盤ごとアッセンブリ交換しちゃうパターンだと思うが、それを断ってブログ主は電源部のコンデンサのみを自分で交換している。

結果としてはそれで正常に使えるようになったのだから正解だったわけだが、一応プロの端くれとして修理に携わっていた人間からすると多少ひっかかるところがある。


今回のケースはコンデンサが妊娠しているという、見た目で判断がつきやすい状態だったというところがポイントで、これが他の部品、例えばトランスや抵抗、ハンダのクラックやICの故障など、素人目でわかりにくい故障箇所だった場合はどうだっただろうかと思う。
見た目で分からない故障は多々ある。そういった場合はテスターを駆使して故障箇所をあぶり出したり物によってはオシロスコープを使ったりして故障箇所を切り分けたりする。

言ってみれば修理の最も重要な工程は故障箇所の特定なのだ。
それさえわかればあとは壊れた部品の交換だけなのでそこだけクローズアップされてしまうと「こんなもんで高い修理代とるのか」という事になってしまいがちだ。


今回のケースは、たまたま素人目にもわかりやすい故障箇所だったし、半田付けの経験さえあれば比較的交換も容易なコンデンサだったから修理できたのでは?と穿った見方をしてしまう。


確かに2万円で購入したDVDプレイヤーの修理に9000円かかるのは高いという感想を持つのは当然だと思う。
けれど、これが仮に20万円の高級DVDプレイヤーだったとしても、故障箇所さえ同じなら修理代金もほぼ同じだったはずだ。
20万円のDVDプレイヤーが9000円の修理で直るのならなんとなく安く感じる。

安い家電製品というのは、人件費の安い海外の工場で大量に生産するからこそ可能なのだが、修理の場合は国内の技能者が、最初から最後まで完全手作業でそれなりの時間をかけるわけなので、人件費のウェイトが極めて高くなり「たった500円の部品を交換しただけで9000円とるのかよ」というように、修理代金がぼったくりに感じてしまう現象が起こる。
これは身近にある家電製品の値段が異常に安くなりすぎた弊害なのだと思う。





以下余談。

あくまでも予想になるがONKYOのメーカーサービスはコンデンサだけを交換するのではなくて、電源ユニットの基盤ごとアッセンブリ交換するつもりだったのではなかっただろうか。

アッセンブリ交換するメリットはそれなりに多いのだが、基盤ごと交換してしまうので修理パーツの単価が高くなるというデメリットがある。さらにそういった方式が一般的では無かった昔に比べると大雑把な故障箇所特定技術でも修理が行えてしまうので修理者のスキルアップという点では疑問が残る。

ただし、現状のメーカーサービス部門は慢性的な赤字体質のため、技術者の育成というよりも現場の効率化にリソースを振っているのが実情なので、短時間の講習やサービスマニュアルを読ませるだけでサービスマンを促成栽培するということが行われている。
しかも最近では自社のサービスマンを社員として抱えることも少なくなって、請負契約でメーカー修理のサービスマンを外注で賄っているケースが多い。

これも技術的裏付けをそれほど重視する必要がなくなるアッセンブリ交換が主流になったからこそできることである。


基板上の壊れた部品だけを交換するわけではなくて、基盤ごと新しく交換してしまう「アッセンブリ交換」という手法が主流になり始めたのは私が現役だった15年ほど前だったと記憶している。

これは修理の工程が一気に容易になるというメリットが有るのだが、その半面故障箇所の特定精度の技術が甘くても大抵の場合いけてしまう。
さらに基板上の周辺部品を巻き込んで壊れている可能性が疑われる場合でも、根こそぎ交換してしまうわけだからそういった心配をする必要もない。

アッセンブリ交換が主流になると、昔のような高い技術を習得しなくても修理が可能になる。
とりあえず怪しい箇所を丸々交換してしまうのだからピンポイントで故障箇所を特定する必要が無くなる。

先日愛用していたスマホの電源が入らないという症状が出たのでショップに持ち込んだ。
数日して戻ってきたので修理項目を見てみたらスマホのガワ以外、つまり中身はすべて新品に交換されていた。
スマートフォンというのは、あれだけ小さな中にありとあらゆる最先端の部品を詰め込んでいるのだから、手作業で壊れた部品だけをピンポイントで交換するというのは無理があるのは理解できる。


またそれとは別に私はロジクールのマウスやキーボードを好んで使っているのだが、お世辞にもこのメーカーの商品は耐久性が高いとは言えない。
現にこの記事で書いたようにマウスが壊れた。
dobonkai.hatenablog.com

ロジクールのサービス部門は割り切っていて、保証期間中に壊れた場合修理ではなくて新品に交換してしまう。

商品を安く提供するには工場で大量生産すると書いたが、修理はどうしてもマンパワーが必要になる。
こういったコストをカットするためにロジクールは修理をせず新品交換してしまうという方式をとっているのだが、おそらく今後は多くのメーカーがこのパターンを採用するようになると思っている。


昔ながらの修理の現場を知っている者としては多少寂しいところはあるのだが、それが時代に即した合理性なのだと思う。