ネットの海の渚にて

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映画「竜二」にまつわる様々な逸話と金子正次という男の話

ヤクザ映画の変遷

ヤクザ映画というジャンルがある。
古くは高倉健が演じた「背なで泣いてる唐獅子牡丹」でお馴染みの「昭和残侠伝」を始めとする、60年代のある意味で勧善懲悪的でわかりやすかった任侠モノがあり、その次に出てきたのが手持ちカメラを多用し、リアルさを強調した「仁義なき戦い」だ。


深作欣二がメガホンを取った「仁義なき戦い」は、本物のヤクザだった美能幸三の手記を元にして、実際の抗争事件を描いたものだ。
70年代のヤクザ映画を代表する「実録物」とよばれるこのシリーズは、興行的に大ヒットとなり、派生作品を含めると膨大な数の作品を世に生み出してきた。


80年代に入ってヤクザ映画の流れをガラリと変えたのが今回紹介する「竜二」だ。
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時代劇テイストが残る任侠モノから、リアル主義に徹した実録物。
そして次世代のヤクザ映画というジャンルの描き方を導いたのは間違いなく「竜二」だ。


竜二で主演、脚本を担当した金子正次はこの作品だけではなく、没後に映画化された柴田恭兵主演の「チ・ン・ピ・ラ(1984)」、陣内孝則主演の「ちょうちん(1987)」そして、哀川翔主演の「獅子王たちの夏(1991)」の脚本を書いている。

これら作品群の特徴は任侠モノでも実録物でもない、どこかスタイリッシュでクールでそれと少しのユーモアが含まれた今までとは違う、新たなヤクザ映画の描き方をしている。

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