ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

この時期になると今でも必ず思い出すこと

埼玉で踏切に車が侵入して事故が起こったニュースを目にした。

今回の話はあまりに身バレの可能性が高いので躊躇したが書くことにする。

俺が高校一年の頃の話だ。だからもう20年以上前のことだ。
他の高校がどうだったか知らないが俺の学校では体育の時間になると男女が別れてそれぞれ隣のクラスと合同で授業を受けるという仕組みだった。

体育の時間だけ隣のクラスの連中と一緒に授業を受けるわけなので名前と顔は一致するくらいの関係性だった。
だからM君とも二言三言会話をしただけで友だちでは無かったがどこかでばったり出逢えば「よぉ」と声を掛ける程度の間柄だったと思ってくれればいい。



そのM君はちょうどこの時期に踏切事故にあって死んだ。

事故の概要を説明する。
事故が起こった踏切は生活道路で車がすれ違うことも困難な狭い道だった。
車がいるとその横を自転車がすり抜けることも出来ないくらいに狭い道だったから、遮断機が降りていると最初にそこに止まった物が先頭になる。
その日はたまたまM君が誰よりも早く踏切に辿り着いたので遮断機の直前で自転車にまたがったまま電車の通過を待っていた。
その事故を起こした自動車が彼の後ろにピタリと停車した。
更にその車の後ろにM君と同じクラスのF君がいた。
M君の姿を発見したF君は「おはよう」と声をかけたそうだ。
M君とF君は車を間に入れて短い挨拶を交わしたことになる。

その直後、間にいた車はゆっくりと前進した。
先頭で自転車にまたがったままのM君をその車は電車が通過中の踏切内に押し込んだ。
車の運転手はタバコに火を点けようとしたがライターを足元に落としてそれを拾うために屈んだ際、踏んでいたブレーキが緩んだらしい。

為す術もなく踏切内に押し出されたM君は自転車ごと電車に巻き込まれ即死した。
翌日の新聞に載ったM君の自転車はそれが元自転車だったと説明されなければ分からないほどの鉄くずになっていた。
運転手はM君が電車に巻き込まれる音を聞いてブレーキを踏んだので無傷だった。


この一部始終は全てを目撃したF君から直接聞いた話だ。


M君はサッカー部で将来を期待されていた選手だった。
高1ですでに身長は185センチあって上手いキーパーだと一部では噂になっていたほどだ。

もしあの日の朝、M君が1分でも遅く家を出ていたらおそらく事故を起こした車の後ろに停車しただろうし、あるいはあと1分早く家を出ていたなら踏切にかからず先に渡っていたかもしれない。
そんなことをM君の葬式の間ずっと考えていた。


事故があったのはとても寒い1月のある日だった。
だからこの季節になると今になっても必ず思い出す。
その踏切は今でも仕事で何度も通る。
そのたびに思い出す。


決して友だちだったわけではないけれど今でもキミのことを思い出すよ。
M君の冥福を祈ります。

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