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ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

【レビュー】ベイマックスを見たので感想など(ネタバレ無し)

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遅ればせながらベイマックスを見た。
国内で封切りがされた頃から各所で話題になっていた作品だから、すでに様々な考察がされ尽くしただろう今になって、こういう記事を書くことに意味があるのだろうかと疑問に感じつつも、自分の備忘録的に書いておくかなってとこです。
おそらく他の方が書かれているレビューを越えるようなものは書けません。あしからず。

わかりやすいストーリー

あらすじ

西洋と東洋の文化が融合し、最先端技術分野の先駆者たちが数多く住んでいるサンフランソウキョウ。そこに暮らしている14歳の天才児ヒロは、たった一人の肉親であった兄のタダシを亡くしてしまう。深い悲しみに沈む彼だったが、その前にタダシが開発した風船のように膨らむ柔らかくて白い体のロボット、ベイマックスが現れる。苦しんでいる人々を回復させるためのケアロボット・ベイマックスの優しさに触れて生気がよみがえってきたヒロは、タダシの死に不審なものを感じて真相を追い求めようと動き出す。
http://www.cinematoday.jp/movie/T0017914

www.youtube.com
(●ー●)わたしはベイマックス。あなたの心とカラダを守ります。
低年齢層も見るディズニーの映画なのだから、わかりやすい作品作りをするのがあたりまえであって、日本のアニメ映画にありがちな難解でクリエイターの一人よがりになりがちなこともなく、ポップコーンを片手に気軽に見ていても筋がわかるし、もっと言えば途中でお腹が痛くなって10分ほどトイレに立って戻ってきても迷子になるようなことはないくらい明朗なストーリーになっている。






特に目新しいことは何もなく、その全てがいわゆる「王道」で変化球は一切ない。
こういう作品は得てして退屈になりがちなのだが、そうさせないのがベイマックスの凄いところで、細かい部分にまで計算が行き届いている。
ベイマックスの可愛らしい見た目や体型。動きやしゃべり方もすべてが精緻なマーケティングに基いて作られている。

それはストーリー内の僅かなギャップでもそうだ。
あらゆる年齢層、様々な国籍や宗教、その他のバックボーンに配慮して、ほぼすべての観客から苦情の類が来ないだろうという、幾重にも配慮がなされた作られ方だ。

「クセ」とか「アク」といった、ある意味では映画の本質みたいな部分を、徹底的に洗い出して絞り出してクリーンにしている。
こうなると大抵は、スッカスカなコクのない作品になるはずなのだが、そうさせずにストーリーに引き込ませる手腕は素直に凄いと感じた。
結局いくつかのシーケンスで泣かされそうになったし、鑑賞後の満足感も高い。
見て損のない映画になっているのは間違いない。

そのかわり、10年後も語り続けられる作品かと問われたら答えはNOになる。
エンターテイメント性も高く完成度も高レベルで帰結している。文句をつける隙がない完璧な作品と言ってもいい。
だからこそ観客の心に深く突き刺さることもないということになる。

10年後も20年後も語られ続ける作品というのは、得てして賛否両論を巻き起こした作品だ。
場合によっては、観客に軽いトラウマすら植え付けるような刺さる作品というのは何十年も語られ続けることになる。

ベイマックスは完璧なまでの優等生的映画なのだ。
オール5の優秀な作品だから、物語内で語る部分が無い。
緻密なマーケティングによって、興行的な成功を収めることは達成できたけれど、映画界に爪痕を残せたかというと疑問が残る。

僅かな毒は薬になるというが、はじめからまったくの無毒ならば薬になる可能性はゼロだ。

ヒット作は計算で作れる

天賦の才を持った一人のひらめきによって創りだされた作品ではなくて、綿密なマーケティングと緻密な計算によって優秀な作品が生み出されるのは、なんとなく違和感はあるものの、日本映画界のように一握りの天才におんぶにだっこしている現状のほうが本来あやういわけだ。
もし宮﨑駿がいなかったら今の日本アニメの隆盛はあったかどうか……。
アニメというジャンルで実写映画に引けをとらない興行成績を叩きだした宮崎がいたからこそ、それに続いてアニメ映画を作る道ができたわけだ。

ベイマックスという作品の作られ方を見ていると、100年以上続いている映画という膨大な財産を精査して、ヒット作を計算で導き出す、金融工学のような考え方が徐々に浸透しつつあることを感じずにはいられなかった。

どういう作品がヒットするのかを徹底的に研究した結果、ベイマックスという非常に完成度の高い映画が出来上がったわけで、それは逆に言うと天才不在でも過去の財産で良作は作れるということでもある。


妖怪ウォッチを創りだしたレベルファイブは「ヒット作は狙って作れる」を地で行ってるような会社で、実際に次々とヒット作を飛ばしている。
旧来からあるギャンブル的な「才能」に頼った作品作りよりも、ベイマックスやレベルファイブが導入している綿密なマーケティングによって、ヒット作を作り出す方がリスクヘッジの面で優秀だと映画業界に判断されるのは間違いない。

膨大な制作費を安定的に回収するために、今後は今以上にマーケティングが重視されていくのは予想できるし、グローバル化に向けて世界に出しても問題ないような作品作りがなされてくものだと考えるとなんとなくさみしいものがある。

昔の作品にはあった「クセ」や「アク」のようなものが脱臭漂白されて無味無臭の優等生的作品だらけになったら困るなぁと、ベイマックスを鑑賞しながらそんなことを考えていた。