実名じゃなく匿名でブログを書くのは万が一の際の保険になるから
以前、ネット上で顔出し実名で活動しないのはなぜですかという質問を、ブログに載せているEメールから頂戴したことがある。
その人曰く、今は凡百のブロガーがいるのだからその中から頭一つ抜けるためにも、顔を出してセルフブランディングしたほうが良いとのこと。
こういう時代なのにハンドルネームでブログを書くなんてもったいないとのことだった。
確かに周りを見渡すと実名だけでなく顔まで晒してブログを書いている方が非常に増えたなという印象がある。
こういった事象を眺めていると時代は変わったのだと実感させられる。
ネットの黎明期はそれこそ一般人が立ち上げたホームページに家族の写真なんかが掲載されているだけで、2ちゃんねるに晒されたりしていた時代もあった。
まだダイヤルアップの頃の話だ。
そういう時代からネットを見ていたから、自分の本名をネット上に出すことに大変ためらいがある。
ましてや顔写真なんてもってのほかだ。
これはなぜかというと、ネット上でなにかの活動していると、その成果物を自分の意志とは無関係にその他大勢の目に触れさせてしまうケースが出てくるからだ。
いわゆる「バズ」というやつだ。
ネット上に何かを投稿したらそれは必ずしも仲間内だけで消費するとは限らない。気がついたら自分でコントロールの効かないところまで拡散してしまうケースをよく見る。
これはその作品が「良い物」ということで広まったならそれほど問題はないが、何らかの層を意識的にあるいは無意識に刺激する内容、つまり「炎上」というパターンで拡散されたときに、自分の想像を遥かに超えたネットの悪意みたいなものに集中的に襲われることになる。
大抵の炎上は数日もすれば収まってまた別の話題に移っていくものだからその間だけじっと我慢していればいいのだが、なかにはそうもいかないケースというのも出てくる。
炎上の内容によっては凄まじい怨嗟を産んでしまうケースも極僅かではあるが起こりうる。
いわゆる「特定班」が発生するレベルの炎上や問題を起こすと実生活に影響が出てくる。
わかりやすい例で言うと数年前やたらに目についた、いわゆるバカッターというものがある。
このバカッター案件では、個人が特定されて学校や職場に電凸されたりして、本人としてはネット上のちょっとした悪ふざけのつもりだったものが実際に退学や退職に繋がるケースも複数あった。
これはネットネイティブである若年層のSNSでの振る舞い方の特徴でもあると思う。
彼らは自分の顔や名前、学校などの個人情報をなんのためらいもなくSNS上にあげてしまう。
ネットというのは決して閉じた世界でなくてむしろ逆に完全に開いた世界なのだけれど、生まれた時からネットがあった若年層にはこの感覚が無いのだと思う。
バカッターもSNSにのせる個人情報をきちっと管理しておけば、実生活にまで炎上が及ぶことも無かったはずなのだが、そういうことをやらかしてしまう若者に限って見事に個人情報がガバガバだったりする。
バカッターのような炎上は、分別のある大人であれば普通起こさないので問題ないのだが、怖いのは思いもよらぬ場所から恨みを買ってしまう場合があることだ。
私も気がつけばもう3年弱、はてなでブログを書いている。
はじめたばかりの頃にくらべたら信じられないくらいの多くの人に読んでもらえるようになった。
それは大変ありがたいし感謝しかない。
ところが、おそらく読まれる数がある一定の閾値を超えると「おかしな人」に見つかってしまうことがある。
私のブログはおかげさまで炎上のようなことも起こしていないし、極端な言説である一定の層の怒りを買うようなセンシティブな話題にも手を出していない。
だから本来粘着されるようなことは無いはずなのだが、ブログを始めて1年目の終わりぐらいからそういう人に目をつけられたことがある。
あまり細かい内容は書きたくないので省かせていただくが、要はその人が明らかに私の書いた内容を誤読をしたことがきっかけで、執拗に私を責める罵詈雑言の内容のメールが異常なほど送られてきていた。
明らかに身体に危害を加えてやるぞという脅迫罪に抵触する内容のものだったし、私の個人情報を探り当てて出向いてやるから覚悟しておけという文面だった。
この時は自分の個人情報を一切ネットに出していないから、どれだけ掘られたって絶対わかるはずがないと自分に言い聞かせていたのだが、それでもやはり強烈なストレスとして私を苦しめたわけで、もしあの時点で実名や顔出しをしていたら多分耐えられなかったと思う。
ネットでブログを書いていると、全く思いもよらない災難に巻き込まれることもある。
もちろんバカッターのように自分から問題を起こすのなら仕方ないが、落ち度がないのに恨みを買ってしまいしかも危害を加えてこようとする人とつながってしまうことも、ネットなら十分にありえる。
そうした場合に保険になりうるのは「匿名」であり、自分の情報を無闇に公開しないという「ネットリテラシー」だ。
ネット上で危ない人に目をつけられても実名や顔写真、個人を特定可能な情報を晒していなければリアルの生活にまでは侵食してこない。
もしネット上で居づらくなってもそのIDを捨ててしまってまた新たなアカウントで始めればいい。
ネット上では何度でもやり直しが効く。
しかし実社会においての本名というアカウントは、なにかがあったとしてもそう簡単に変更できない。
釣り記事を書いたら見事にバカが釣れた釣れたと煽るようなことを顔出しブログでやる肝の太い人がいるようだが、ちょっと掘っただけで実名まで出てくるようなガバガバさは危機感が無さ過ぎて驚いた。
天然なのか狙いなのかわからないけれど、あんなふうに人をバカにするような記事を書いているとカルマ値が急上昇することになる。
ヤバイ人はそういう匂いにつられてやってくるので、あんまりふざけたことを繰り返していると面倒を引き寄せちゃいますよってことだけ伝えて今回はおしまい。