ネットの海の渚にて

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ぜひ読んでもらいたい 京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」のまとめ

百鬼夜行シリーズ

俗に「京極堂シリーズ」と呼ばれることが多いが作者本人が「百鬼夜行シリーズ」と呼んで欲しいとおっしゃっているので本項では「百鬼夜行シリーズ」として統一します。
(掲載は発行順です)



姑獲鳥の夏 (KODANSHA NOVELS)

姑獲鳥の夏 (KODANSHA NOVELS)

姑獲鳥の夏

京極夏彦のデビュー作で百鬼夜行シリーズの第一作でもある。
さすがに処女作だけあって他の作品に比べると未熟な部分も散見されるがそのストーリーテリングは見事。このシリーズの礎となる要素が山盛りなのでこれを読まずには百鬼夜行シリーズを語ることは出来ない。逆に言えば京極色が一番薄い作品でもあるので読みやすいと言えば読みやすい。京極初心者には最初にこの本をとってもらいたい。



魍魎の匣 (講談社ノベルス)

魍魎の匣 (講談社ノベルス)

魍魎の匣

2作目でいきなりの最高傑作と言ってもいい完成度。このシリーズ特有のドロドロとした薄暗い世界観と無垢過ぎるが故に残酷な少女。その対比が「みっしり」と詰まっている。相当のページ数だが止め時がなくなり寝不足は必須。是非時間のあるときに読んでもらいたい。私の中では百鬼夜行シリーズで好きな作品第2位。



狂骨の夢 (講談社ノベルス)

狂骨の夢 (講談社ノベルス)

狂骨の夢

3作目にして極めてミステリー色が強い作品になった。死んだ人間が生き返るという謎を中心に二転三転する。登場人物がそれぞれ隠し持っている強いトラウマを京極堂がいかなる手段で解き放つのか。



鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻

箱根山中にひっそりと佇む古寺は完全に外界と遮断されており異様とも言える世界がそこに構築されていた。なぜか地図にも掲載されていないその寺の中で何が起こっているのか。密室とも言えるその舞台は程よい緊張感で読者を引き込む。豊富な「禅」の知識も面白い。
私の評価ではこのシリーズ第3位。



絡新婦の理 (講談社ノベルス)

絡新婦の理 (講談社ノベルス)

絡新婦の理

冒頭でいきなり犯人(と思われる)と京極堂との会話から始まる。そこから一気に怒涛の展開で完全に止め時がわからなくなる傑作。とにかく分厚い京極夏彦の本は止め時をコントロール出来ない人にはおすすめできない。私はこの作品のせいで徹夜して仕事に行った。
作中に配置されたあらゆる伏線が見事に集約されていくその最後は快感。
是非読んでいただきたい。私はこの作品を第1位としている。



塗仏の宴 宴の支度 (講談社ノベルス)

塗仏の宴 宴の支度 (講談社ノベルス)

塗仏の宴 宴の始末 (講談社ノベルス)

塗仏の宴 宴の始末 (講談社ノベルス)

塗仏の宴 宴の支度
塗仏の宴 宴の始末

百鬼夜行シリーズ唯一の2部作。
制作側の話ではそれぞれ独立しているとのことだがやっぱり濃密に絡み合ってるので両方読まないと面白くない。推理小説的成分が強くなった前作の反動か「支度」の方は妖怪話がメインになる。「始末」は京極堂の謎に包まれた過去の話が徐々に明かされてとても面白かったが作品を通した評価になると佳作といったところか。



陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)

陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)

陰摩羅鬼の瑕

大変申し訳無いが百鬼夜行シリーズ最低の出来と言わざるを得ない。このシリーズの特徴である先が読めない展開は全くない。おそらく読んだ人が序盤で全員気づくであろう要素が何のひねりもなくそのまま落ちに使われた。正直京極夏彦の熱狂的ファンである私が今後彼の作品を読むのを止めようかと思った作品でもある。




邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫

うーん。これも前作同様つまらない。どうも作品執筆中に講談社と揉めたらしいが駄作になったのはそれだけが原因では無い気がする。京極氏がこのシリーズに対する情熱が冷めたような気がした。予告されていた最新作「鵺の碑」も本人が2012年中には出したいと言っていたにもかかわらず現在に至るまで発売の発表は無し。
なんだかこのシリーズが尻窄みになっていく気がしてファンとしてはとても寂しい。


最後に

この百鬼夜行シリーズは「姑獲鳥の夏」から「絡新婦の理」までの5作を読めばいいと思います。
残念ながら6作目以降はおすすめできる内容ではありません。
それは私が熱狂的な京極夏彦ファンであるがためにその閾値がかなり高めに設定しているからで普通の感覚の方が読めば十分楽しめる内容なのかもしれません。
あくまで個人的な見解ですので京極ファンの方々の気分を害する内容があったとしたらここでお詫び申し上げます。