アメリカにはボウフィッシング(Bowfishing)というものがある。
これは決して伝統的なものではなくて比較的新しいレジャーだ。
ボウフィッシングの存在を知ったのは私の記憶が正しければ15年ほど前に釣り雑誌で見たのが最初だと思う。
アメリカの河川や湖などの内水面において外来魚の被害がかなり増えてきている。
ハクレンという中国原産のコイ科の大型魚が大繁殖して様々な被害を及ぼしている現状がある。
中国四大家魚の一つで主な食性としては草食。日本でも利根川水系などで繁殖が確認されている。
大繁殖してしまうプランクトンを食べてくれるということでアメリカに導入された歴史がある。
大量に発生したプランクトンは季節終わりに一気に死んで腐敗臭を放ち、水質を悪化させる。そういうものの一助になればという安易な考えからハクレンが導入されたわけだが、その結果内水面において他の魚種を圧迫するほどに大繁殖してしまった経緯がある。
アメリカにおける内水面を使ったレジャーと言うのは、いわゆる白人の富裕層の遊びという側面がある。
彼らはプレジャーボートを持込んでかなりの速度を出して内水面を滑走するのだが、そのモーター音などに驚いてハクレンが逃げ惑いジャンプする。
この際に高速で走行するボート内に、メーター級のハクレンが飛び込んで乗員に激突して骨折するなど、大きな怪我を負うという事故が多発して問題視された。
そういった事もあって駆除しようという気運が一気に高まった背景もある。
そんな中出てきたのが「ボウフィッシング」だ。www.youtube.com
高性能なコンパウンドボウにリール状のものが取り付けられている。
放った矢にラインが結ばれてあって、リールで回収できる機構になっている。
船体の周りにネットが貼られた特殊な船で、水面下にいる群れを探してそこに突っ込んで逃げ惑うハクレンを狩るという遊び
映像を見てもらえばわかるが、彼らは単純に娯楽として楽しんでいる。
ハクレンは外来魚で事故も起こす悪い魚であるという免罪符を手に入れた彼らは、笑顔で弓を射ってハクレンを殺している。
撃ち殺したハクレンは廃棄物として捨てられる。
彼らにとってハクレンは食物ではなくて、撃ち殺しても文句を言われない都合の良い獲物でしか無い。
外来魚の駆除というのはアメリカだけではなく日本国内でも行われている。
けれどそれは決して娯楽ではない。
網などを使ってもっと効率的に行われている。
内外から「動物虐待ではないか」という非難を浴びることもあるボウフィッシングだが、彼らは「駆除を手助けしているのだ」という立場をとっている。だがどう見ても非効率的であれだけ繁殖しているハクレンの駆除に役だっているとは到底思えない。
駆除というのは殺戮ゲームを正統化する言い訳にしか聞こえない。
外来魚を駆除するのは、網で採ろうが弓で撃ち殺そうが結果は同じじゃないかという意見もある。
最終的に命を奪うのだから楽しんでも問題ないという考えもある。
私はおそらくこのボウフィッシングが狩りだけではなくて「食べる」というところまでやるのならギリギリ心情的に許せたのだと思う。
けれど殺したあとは捨てるだけという部分でどうしても納得できない感情が残る。
皆さんはこのレジャーを見てどう思われるだろうか。
ちなみにハクレンは原産国である中国やベトナムでは当たり前に食べられている魚である。
関連動画
下の動画の1分30秒のところを見てもらいたい。ボートに飛び込んでくるハクレンを金属バットで打ち返している。www.youtube.com
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