ここ数日、アニメ業界の過酷な労働環境についての議論が活発になってきている。
そのきっかけになった記事はこれだろう。togetter.com
上記記事に呼応する形で増田(アノニマスダイアリー)でも議論が盛り上がっている。
社員に300万円払えない会社や業界は潰そうよ
アニメ業界の場合を妄想してみる
こういう話をすると、必ず以下の3つの話題になるから、ある程度見えてる..
今回はこの件についてちょっと考えてみたい。
まず現在のアニメ業界には、とても食っていけなような賃金しか貰えていないのに、その業界にたいする大きな憧れからなのか、必死にしがみついている若者がいるという現実がある。
これを一番最初のつぶやきのまとめ記事では、「仕事ではなく趣味なのだから給料は低くても当然だ」と論じている。
もちろんこの言い方はトゲがあって素直に聞きづらいところはある。
けれどアニメ業界にある根源的な病巣を浮き彫りにしている面がある。
アニメ業界の病巣
末端のアニメーターに最低賃金をはるかに下回るような賃金だけで済ませているのは、日本的な師弟制度が背景にあるからだろう。
「お前は半人前の修行中の身なのだから、最低限のお小遣いみたいなもので我慢しろ。金のことは一人前になってから言え」
このような極めて日本的な文化がそこにあるからだ。
徒弟制度というものが今現在もこの国ではまかり通っている。
その考え方はアニメ業界にも昔からあるから、勤労奉仕的な賃金のつり合わない事案が発生してしまう。
もう一つはこのような悪しき風習のようなものがあるからこそ成り立つような、貧弱なマネタイズしか出来ない業界の構造的欠陥がある。
家内制手工業のような、マンパワーに頼らざるをえない業界であるにもかかわらず、その労働力に見合うだけの賃金を払ってやれる体力がそもそも無い。
ものすごく簡単にいえば、全然儲からない仕事なのに、それに就きたい人間があとを絶たないから、使役側にいいように労働力を買い叩かれている現状ということになる。
一般的な感覚からすると異様に低い賃金も「立派なアニメーター(原画作画マン)になるための修行である」という大義名分によって、夢を持った若者の労働力だけを搾取している構図になっている。
たしかに極一部の者は、才能や技術を買われて出世して、結果として食っていけるようになるのだとは思うけれど、その他の多くのほとんどの者は食っていけないまま限界を迎えて労働力と夢だけを搾取されて退場することになる。
低賃金で働かせなければ存続できないような仕事そのものに構造的欠陥があるのであって、そのつじつま合わせに若者の夢を食いものにするのはいかがなものかと思う。
どっちにしても労働集約的な成果物であるアニメの市場価値を高めていく以外に、末端の労働環境を改善することは不可能だろうと思う。
現状のまま、法による規制を強めたら海外へのアウトソーシングがさらに増えるのは目に見えている。
そうなると国内の仕事が減り、次世代のクリエーターが育つ土壌が痩せてしまう。
ジャパニメーションとして世界を席巻したけれど、次世代が育たなければやがて韓国や中国に取って代わられてしまう。
実際に家電製品などは過剰なまでのコスト削減の結果、海外に技術ごと流出して今や目も当てられない惨状になっている。
何もせず甘んじているだけでは、アニメ業界も同じ轍を踏むことになる。
アニメ業界そのものが安く買い叩かれているという現状から脱却しないと抜本的改善は不可能だ。
それでも、若者の夢を食いつぶすことで成り立っている、獏のような業界体質にメスを入れなくてはいけないだろうと思う。