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ネットの海の渚にて

私の好きなものを紹介したり日々のあれやこれやを書いたりします

映画「ノーカントリー」を観たので感想などを書いてみたよ

映画

ノーカントリーを観た。
観たと言ってもこの映画が好きなので今回で多分5回目だと思う。
この映画を観たことがある人は気がついたかも知れないが劇中に一切BGMが存在しない。
もちろん効果音等のSEはあるけれど冗長なシーンなんかで何故か挿入されるBGMなんかは一切無い。
これがどういう効果を狙ってのものかは分からないが二回目に視聴した時に気がついた。(豆知識)

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コーエン兄弟の作品は数多いけれどその中でもこのノーカントリーは一番に上げてもいい。
いや、やっぱり一番はビッグ・リボウスキかな。
どっちにしても大好きな作品ではある。
コーエン兄弟の作品はどうしたって好き嫌いがはっきり出るような作風だ。
赤ちゃん泥棒やビッグ・リボウスキのようなコメディー路線も撮るし、ファーゴや今回のノーカントリーのように目を背けたくなるシーンがあるクライム作品も撮る。
どちらも共通点は登場人物のついた「嘘」だ。
たった一つの嘘をついたばっかりに嘘を重ねていかざるを得なくなって結果的に自分の首を自分で締める形に追い込まれる。
バーバーなんかはその典型的な作品だ。
コーエン兄弟は人の業(ごう)を映しだすのが上手い。
派手なドンパチだったり驚くようなどんでん返しも無い。
淡々と人間の持つ悲しい業を描いていく。


ノーカントリーはひょんなことから大金を手にしてしまったベトナム退役軍人のおっさんがオカッパ頭の不気味なおっさんからとにかく逃げるという内容だ。
あらすじを簡単に説明する。

狩りが趣味のベトナム退役軍人のおっさんがいつものように広大な砂漠地帯で獲物を探していた。
双眼鏡で辺りを探っていると何やら車が何台も止まっている現場を発見する。
よく見るとそこには既に何人もの死体が転がっていて取引の最中にトラブルが起こり打ち合いを始めただろう想像が付く有り様だった。
その光景を一部始終見ていたおっさんは普通の映画だったら「ワーオ」とか言って驚くような演出が入るはずだがおっさんは表情一つ変えない。
こういうところがコーエン兄弟らしいなと思うところでもある。

おっさんはその現場に足を運びギャングが取引に持参したと思われる現金がみっしり詰まったアタッシュケースを発見する。
現場のギャングが全員死んでいるか確認するが車の中にいたメキシコ野郎だけはまだ息があった。その男が拙い英語で水が飲みたいとおっさんに懇願するがおっさんは冷静に「持ってない」と言い放つ。
悠々と現金を持ち去って自宅のモーターハウスに帰るのだがそこに待っている女との会話にも喜びの演出は一切ない。
普通のアメリカ映画だったら「やったぜハニーこれで大金持ちだ」的な会話があるはずなのだがこの映画にはそんな物は無い。
とにかく淡々とストーリーは進む。

その夜、眠りについたおっさんはさっきまで冷静沈着なクールダンディだったのに急に情けを見せる。
現場で出会った瀕死のメキシコ野郎に水を飲ませてやりたいという仏心を出したのだ。
夜中に再び現場に向かったおっさんはそこでギャングと鉢合わせしてしまう。
ここからおっさんの逃走劇が始まるのだが仏心さえ見せなければすんなり大金をせしめることが出来たはずなんだがまあそれこそが映画である。
要は本来持ち合わせていないはずの「仏心」が自分についた「嘘」になる。

もう一人の主人公である殺し屋もとにかく個性的過ぎて一歩間違えば見た目で笑いそうなのだが、そうならなかったのはハビエル・バルデムの演技力が優れていたためだと思う。
無口で何を考えているのか全くわからない恐ろしさは並みの役者では表現できなかったはずだ。
ターミネーター的だったという批判はあるだろうが俺はこの役を演じきったのは凄かったと素直に感心している。

ハビエル・バルデムがガソリンスタンドでそこの店主と会話するシーンがある。
殺し屋が持つ異常性と理解できない哲学を観客に説明するためのシーケンスなのだがこのシーンだけでも随分な価値がある。
短いシーンでありながら凄まじい恐怖感と緊張感はこれだけでもこの映画を見てよかったと思わせるだけの出来だと俺は思っている。

これ以上書くとネタバレになってしまうのでもうやめるが近年観た映画の中でこれほどインパクトの強い作品は無かった。
コーエン兄弟の作品はアクが強いので合わない人には合わないと思う。
誰しもが楽しめる内容では決して無い。
残酷な表現も多くある。
それでもどうか一回は見てもらいたい。
この作品でコーエン兄弟に興味をもったなら過去の作品も見てもらいたい。
良作揃いだ。
年末年始にコーエン兄弟の映画をまとめて見るのも乙なもんだ。

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