ネットの海の渚にて

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「ボクは映画が大好きです」の話

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ボクは映画が好きだ。

どれくらい好きかというと最低でも年間100本は視聴している。
と言っても映画館で鑑賞するのは年に1~2本なのでコアな映画ファンからは馬鹿にされるが仕方がない。
腰を悪くして以来、長時間同じ姿勢で座っていることが出来ないため映画館だと周りの人に迷惑が掛かってしまう気がして行きにくい。
10分ごとに姿勢をコロコロと変える、でかい図体の男がボクの前の席にいたとしたら間違いなくイヤである。

ボクは無意味に体がでかいので昔からある古い映画館だと膝が前の席にあたる。そのため椅子に深く座って背筋を伸ばすのだが、そうすると後ろの席の人に「迷惑じゃないかな」と気になってしまい結局映画に集中できない。
だからどうしても映画館で見なければならない作品(特に3D)以外はレンタル店に並ぶまで我慢する。

子供の頃から親にお盆や正月に映画館へ連れて行ってもらってはいたが、自分の意思で映画を見るようになったのは今から20年程前からである。
そのころから年間100本は必ず見ているし、完全に映画の虜になっていた時期は年間350本は見ていた。毎日寝る前にかならず一本見ていたのでそんな計算になるがそれ以外にも見ていたから本当は400本を超えていたかも知れないが少なく見積もってもそれだけは見ていた。



完全に映画中毒だ。

さすがにここ数年は年間100~200本の間に落ち着いているが時間的リソースが許すのならもっと見たいのが本音だ。
洋画と邦画の割合はほぼ半分。意識的にそうしているわけでは無いが結果としてこの比率になっている。
古い作品ではチャップリンや小津安二郎辺りから見始めて好き嫌いせず手当たり次第に見ているつもりだがフランス映画やイタリア映画はやや苦手でどうしても手に取る回数は少なくなる。
イタリアあたりのモキュメンタリー作品を一時期むさぼるように見ていたがすぐ飽きた。
フランス映画のねちっこい感じもあまり好みに合わず見た本数はそれほど多くない。
香港映画も中国映画もたくさん見たし、旧共産圏の映画は一種独特の雰囲気があってなかなか好きだ。

どれか特定のジャンルにこだわって見ているわけではないので節操ないことこの上なしだ。そもそも個人経営のレンタル店しか無かったので選り好み出来なかったというのが現実である。
現在こそ大型のレンタル店によって駆逐されてしまったが当時は個人経営のレンタル店があってそれらを虱潰しに廻っていた。
週末ごとにまとめて7本借りるのだからあっという間にその店で見たい物は底をついてしまう。そのため車で小一時間かかる店まで通っていたこともあった。
ここ十年くらいでTUTAYAを初めとする全国展開の大型店が我町にもゾクゾクと参入し個人店はあっという間に姿を消した。
大型店はたった一件で個人店の10件分以上の品揃えがあるのだから便利ではあったが少々気の毒にも思えた。
結局ボクも大型店を利用していたのだから個人店駆逐の片棒を担いでいたわけで何も言えないのだが……。
今ではその大型店同士が熾烈な戦いを繰り広げているので利用者としては料金的にもありがたいが、もし敗者が決定してどこかが寡占してしまったらと想像するとヘビーユーザーとしては憂慮する問題ではある。
さらに昨今ではHulu等、ネット上で気軽に鑑賞できるサービスが登場して昔日の感がある。
映画ファンとしては選択肢が広まるのは嬉しい限りだが昔に比べると「映画を観賞すること」のありがたみが減ったなあと感じる。


レコードをかける際、傷がつかぬよう丁寧に扱いスプレーをシュッと一かけする。クリーナーでそうっと一周して埃を拭う。
やたら大きなステレオの前でレコードを聞くのだが、それら一連の行為が「今からレコードを聞くのだ」という気持ちを盛り上げていた気がするがCDにその主役を取って代わられた結果、音楽を聞く行為はとてもカジュアルになった。
現在はそれが更に進化してデジタルデータになったおかげでレコードやCDといった「現物」すら存在しない。
便利になるのは良いことではあるが音楽を聴くという行為はなんでもないものになってしまった。

もちろんこのような時代の流れを非難する気は全くない。
ボクもその流れに乗って利用しているのだから批判する立場にあるわけがない。ただちょっとだけこんなことを思うのだ。

現在、古い映画館は閉鎖の危機に陥っていると聞く。
配給会社がフィルムでの配給を徐々に減らしているからだ。
映画館側が上映したい作品を注文してもそれがデジタルデータしか存在しない作品だと再生設備が無いため上映ができない。
最近ではさらにその傾向が強くなって新作を上映したくてもできない映画館が増えているそうだ。
デジタルデータを扱うように改装するにはあまりに金銭的な負担が重すぎるため閉館を考えている老舗映画館が増えているらしい。

映画ファンとしてはとても悲しいが時代の要請だから仕方のないことなのかもしれない。
この話を聞いてからボクは腰痛と相談しながらできる限り映画館へ足を運ぼうと思っている。

映画館と観客の文化史 (中公新書)

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映画館ほど素敵な商売はない

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