ネットの海の渚にて

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ボクが買ったレコードの話

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ボクが中学生だった頃ようやくCDなるものが店頭に並ぶようになってはいたがそれでもまだレコードが主役だったしそのジャケットの大きさからしても見慣れぬCDは随分と貧弱に思えたものだ。
中学生にとってレコードを買うというのは一大決心だった。
買ったレコードをニヤニヤと眺め回して部屋の見栄えのいい場所に飾る。ジャケットはおしゃれアイテムとしての側面もあったと思う。
レコードとCDは長らく併売されていたが同じ値段を出すのならレコードだろうという思いが当時のボクには強かった。

お金が無いから簡単に何枚も買うことは出来ない。だからどれを買うかということは真剣に悩んだ。
当時はカセットテープがお金の無い僕らにとっては必需品で友だちとの貸し借りもレコードではなくカセットテープだった。
そのやりとりの中で友人から借りた中にボクの心を鷲掴みにしたバンドがあった。



THE BLUE HEARTS

初めて聞いた曲は「終わらない歌」だったか「リンダリンダ」だったのかはっきり憶えていないが生まれて初めて出会ったパンク・ロックに衝撃を受けた。
恐ろしいほど真っ直ぐで荒々しくて怒鳴っているようでも優しくて、とにかく今まで聞いたことのない音楽だった。

ヒロトが心の奥底から叫ぶその歌声は決して耳障りの良いものではない。
その歌声はもはや歌というよりも詩を聴衆に叩きつける新しい朗読のような気がしていた。
その圧倒的な説得力はウブな中学生だったボクを虜にさせるには充分過ぎた。

貯めた小遣いを握りしめてレコードを買った。
父親が使っていたやたらでっかいステレオの電源を入れて買ったばかりのレコードに傷を付けぬよう慎重にジャケットから取り出した。
回転数を確認してゆっくりと針を落とす。
僅かな沈黙の後、ヒロトの魂の歌声がスピーカーから溢れてきた。
あまりに大きな音でかけていたから母親からうるさいと何度も注意を受けたがそのたびに申し訳程度に音量を下げるだけで少ししたらまたこっそりと音量を上げていた。

毎日毎日狂ったように聞いていた。
レコードが擦り切れるという比喩が実際にも起こることだと実感した。
その一枚のために針の交換も必要になった。


それから何年かして自分で金を稼ぐようになった頃CDを買い直した。
レコードと比べて小さくまとまってしまったCDジャケットは少々寂しかったけれど当時の思い出が蘇ってちょっとセンチな気分になったものだ。
その後はTHE HIGH-LOWSまで追いかけたがザ・クロマニヨンズは聞いていない。多分それはボクが歳を取ったせいなんだろうと思う。


最近では音楽を聞く時間がなかなか取れないがそれでも時折THE BLUE HEARTSを聴くことがある。
レコードを再生できる環境に無いのでCDになるがやっぱりあの当時の青臭い思い出が蘇って恥ずかしいような照れくさいような感情は案外良いものだ。

THE BLUE HEARTS

THE BLUE HEARTS