町の外れ、海のすぐ手前に市営のプールがあった。
バスに揺られて約30分。
土曜日の半ドン授業の後は、友達数人と連れ立ってそのプールによく行った。
当時のテレビは「世界」につながっていたような気がするって話
俺が子供のころは自分の部屋にテレビがあるってのは、そりゃあ大きなステータスだった。
当時のテレビの深夜帯はいわゆるエッチな番組がバンバン放送されていた。
今の時代からは信じられないかもしれないが、女性のヌードが地上波に流されていた。
子供が見るドリフでも銭湯のコントなんかで、たくさんの真っ裸のお姉さんたちが志村けんから逃げまわったりしていた。
ゴールデンタイムでそれだから深夜帯はもっと凄い。
部下を決して怒らなかった上司の話
上司に全く怒らない人がいた。
なにか問題が起きてもその失敗をした部下に、何も言わず事を片付けてしまうそんな人だった。
皆はその上司を「優しい人」と言っていたけれど俺はイマイチしっくりこなかった。
その上司の下で働いていたのはおよそ二年ほどの短い期間だった。
もちろん俺もその間に何度か失敗をしたけれど、その度に何も言われず上司が丸く収めてくれた。
シロツメクサの絨毯の上で
photo by Pensiero
今から13年前の話だ。
その頃、俺には思いを寄せる女性がいた。
同じ職場で彼女のほうが10才以上歳上だった。
彼女には旦那も子供もいた。
彼女はパートで働いていたのだが、なんだか妙に気があってすぐに仲良くなった。
最初のうちは家庭での小さないざこざの愚痴を聞いたりしているだけだったが、そのうちに旦那さんと離婚を考えているという深刻な内容の相談に変わっていった。
幸せってなあにと問う女の話
もう随分昔の話だ。
俺は女を背にしてベットに腰掛けながらタバコを吸っていた。
その背中にシーツに包まったままの女は唐突に言ったんだ。
「幸せってなあに?」
女なりの冗談だと思った。
女なりの謎かけのようなものだと思った。
女なりの愛の確認方法なのだと思った。
でも違った。
女が「幸せ」を理解できていないことに気がつくまでそれほど時間はかからなかった。
「幸せを教えてよ」
女にせがまれて俺は閉口する。
俺は「幸せ」を理解しているのか?
その女を口説くとき、幸せにしてやると言った気がする。