ネットの海の渚にて

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【ヴィーガン】肉食は野蛮な行為なのかということについて考える

このツイートがバズっていた。

ちなみにこんなツイートに真面目に突っ込んでも無粋なのだが、ツイ主が仏教を持ち出しているので一言物申させてもらうと仏教こそヴィーガンの先駆けというか極みみたいなものだし、仏教でいうところの植物は有情(動物などの生き物全般)の反対である「無情」の扱いなので論が破綻してますよってことは突っ込んでおきたい。
余談はここまでで以下本題。


ツイッターというかネット界隈ではヴィーガンの評判はすこぶる悪い。
それっぽく言えばパブリックエネミー的な扱いになっている。
まあそれはヴィーガンを自称する方たちの良く言えば先進的な悪く言えばエキセントリックで攻撃的な言動が、非ヴィーガン陣営からすると嫌悪感をおぼえるというのがその正体なのだと思う。

そういったヴィーガンの人たちが提唱することをものすごく単純化すると「肉を食うのは野蛮である」ということになる。
もちろんもっと細かい枝葉の部分もあるのだがその主な訴えは「肉食」という行為を維持するための環境や仕組み全般に避けられない残酷さがあり動物の権利を害しているという観点から「人類は肉食をやめるべき」という論建てであると理解している。


さてこの「肉食は野蛮」であるか?と問われた場合、私は野蛮であることを否定できない。
私達が行っている肉食という行為はやはり野蛮なんだろうと思う。
野蛮だからこそある種の宗教は家畜に刃物を当てる際に祈りを捧げるし出された食事のたびにやはり祈りを捧げる。日本的な文化では「いただきます」と言って食べものへの感謝を示したりする。
そこには自分たちが生きるためとはいえ、生物を殺めたという後ろめたさがあるからこそそういった行為につながったはずである。(祈りに関してはもちろんそれだけではなく他の要素も重なっている)

肉食に対して全く罪悪感を感じないのであればそのような文化が生まれるはずがないのであってやはり我々は肉食に対してなんらかの罪悪感や忌避感をおぼえていることは否定できない。
事実としてと畜産業や精肉、皮革産業に関わる人達に対して「穢れ」という差別的な扱いがあった歴史がそれを裏付けている。
肉食という行いはどうやっても命を奪うという罪の意識から完全には逃れられない。


我々は動物を殺して解体しそれを肉にするという、それこそ血や糞尿にまみれる作業をどこかの誰かにアウトソースしている。肉食には本来必ず付随するはずの残酷な場面を見なくて済む今のシステムは、肉食への忌避感を消費者に極力感じさせないような仕組みになっている。

私はこのブログで過去に書いたように、父方の実家で実際に鹿や猪の猟に同行し解体にも立ち会った経験が何度もある。
生きた動物を〆て肉にする作業は綺麗なものではない。
野生の鹿や猪の体表にはヒルやマダニがびっくりするほど付着しているし、くくり罠にかけて獲った場合は恐怖からなのか暴れまわった挙げ句に糞尿を漏らし、それが体中にこびりついていることもある。
その場でトドメをさしてトラックに積み込むのだが流れ出る血や糞尿で自分も汚れる。
猟銃を使った猟でも急峻な斜面で仕留めた場合はその取り込みが問題になる。成体のイノシシを遠く離れた車にまで運ぶのは正直骨の折れる作業だし下手をしたら獲物もろとも斜面を滑り落ちて命の危険すら伴う。
高齢化の甚だしい猟師たちがこのきつい作業をあと何年やれるのかとも思う。


話を本題に戻すが、肉食はやはり野蛮な行為だと私は思う。
けれど私はこれからも肉を食うだろうし少なくても今はヴィーガン的な生き方を選ぶことはない。
しかしながら肉食が野蛮であることは間違いがないし、これを忌避する人たちは今後時代とともにもっと増えるだろうと思う。

人工的に作られた代替肉が今より発達してそれこそ本物の肉との差がわからない程度にまで技術が上がったら、おそらくヴィーガン的な人は爆発的に増えるはずだし、そういう時代になったら肉食を続ける人たちのほうが少数派になって「前時代的な野蛮人」と蔑まれるようなことになるのは容易に想像できる。
なぜそうなるかというとその兆候は今の時代でも観測できて、例えばクジラやイルカの肉を食うことが野蛮であるというコンセンサスが欧米を中心に主流になっている。
本来クジラやイルカを食うことと牛や豚を食うことに本質的な違いは無いはずだが、現実世界はそうはなっていない。
なぜなら世界は感情で動いているからだ。
いつのまにかクジラやイルカを食うことが野蛮とされたようになにかのきっかけで風向きが変われば牛や豚や鶏を食うことも野蛮とされる流れになってもなんら驚きはない。
それこそ我々の100年後の未来の子孫が今を振り返ったときに、動物を殺して肉を食ってたなんてご先祖様の時代は野蛮だったねと言われても全く不思議ではない。


要するに今は過渡期であるということだ。
ヴィーガンの思想は現時点ではまだ少数派だけれどおそらくきっとその数は増えていき近い将来には逆転するだろうと思う。
肉食を正当化するためにいろいろ理屈をこねてみても、どうしたって肉食にはなんらかの罪悪感はついてまわるしこれはもうどうしようもない。
その罪悪感から解放してくれる美味しい人工肉や代替肉が出現したら今頑なにヴィーガンを否定している人たちもそちらに傾倒していくのだと私は考えている。

ちなみにこの文章は聖夜の夜にローストされたチキンを一人で食いながら書いたものである。
皆様良いお年を。

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